「ずっと騙されていました……」俺ではない炎上 豆腐ハラスメントさんの映画レビュー(感想・評価)
ずっと騙されていました……
映画が始まってから、いえ、映画の宣伝期からずっと、騙されていたのかもしれない。
全体を通して場面の切り替わりが神がかっていました。
切り替わる直前の出来事と切り替わった直後の出来事に何かしら繋がりがあり、巧みでした。場面が切り替わっても違和感を感じさせない作りになっていたと思います。
ずっとナツミだと思っていた女の子がサクラの少女時代だと気づいた時、そして傍にいた男の子(旧姓何でしたっけ、次見た時に注意深く聞いてみよう)が青江だと気づいた時、あ、騙された、と思いました。
でもそれは見抜けなかった悔しさではなく、ずっと違う世界線にいたサクラたちとナツミの世界の点と点が繋がったような、スッキリした気持ちです。
“自分は悪くない”と責任のなすりつけ合いをするような大人になりたくないと誓い、純粋な正義感に溢れていた男の子(お父さんが捕まったのってこの後でしたっけ、そこら辺も曖昧なままだなぁ)が、おそらくお父さんの事件からじていた正義が歪み始め、今の青江に繋がってしまった。(こうやってお父さんの事件がきっかけかもしれないと決めつけるように言及してしまっている私も、もしかしたらSNSを、言葉を、正しく使えていないのかもしれない。)
取調室で「僕は悪くない」と言った青江を見て、ああ、青江はいつから変わってしまったんだろう、と思いました。
この事件を担当していたおそらくベテランの刑事さんが取調室の横で「俺たちは悪くないよ」と言った時、ぞっとしました。
そして、私はこんな風になっていないかな、と考えさせられました。
スミショーの正義は、少年時代ただただ純粋な少年だった青江と重なる部分があり、それにもぞっとしたな........。
自分のしたことを悔いたであろうスミショーのラストの姿は、青江が歩むはずだった今のようにも感じました。
青江の中に、何が混ざって、何を変えてしまったんだろう。
炎が上がってからの長尾謙杜くんの演技にはずっと震え上がっていました。
車に乗り込んだシーンから、あれ、もしかして...と思い始め、サクラが「お父さん!!!」と叫んだところから全ての謎が明かされていくあの、
「?????何が起きてる?????どういうこと?????」
な展開、最高に面白かったです。
取調室の狂気が見え隠れする長尾くんの演技、本当に怖かった。
怖かった、というのがポイントだと思うんです。
殺人犯役を心の底から怖いと思えるのって、それ相応の演技力がないと成立しないと思うんですよ。
これは恐ろしいことです。
長尾くんの今後の俳優人生の末恐ろしさも感じました。
まさかの、まさかの、です。本当に。
“俺は悪くない”から"俺が悪い”へ。
最後の山縣家の姿が、私の、私たちの今後あるべき姿だと感じました。
人を疑う前にまず自分を。
私は?
本当にちゃんと、SNSを、言葉を、行動を、コントロールできているのか。
余談
ここ最近良作に出会いすぎてちょっと怖い..........この作品も想像の数倍面白かった。
