「SNSの闇と人間の本質」俺ではない炎上 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
SNSの闇と人間の本質
■ 作品情報
浅倉秋成の同名小説を原作としたサスペンスミステリー映画。監督は山田篤宏、脚本は林民夫。主要キャストは、主演の阿部寛をはじめ、芦田愛菜、藤原大祐、長尾謙杜、夏川結衣らが名を連ねる。
■ ストーリー
大手ハウスメーカーの営業部長・山縣泰介は、ごく普通の生活を送っていた。しかしある日、SNS上に彼のものと思われるアカウントから女子大生の遺体画像が投稿され、自身が殺人犯であると拡散されてしまう。身に覚えのない冤罪に戸惑う山縣は無実を訴えるが、ネット上の根拠のない情報は瞬く間に独り歩きし、世間から追われる「炎上」状態に陥る。彼は必死の逃亡を続けながら、自身を陥れた真犯人を見つけ出そうと奔走する。謎の大学生サクラ、インフルエンサー、取引先の若手社員、そして妻ら、さまざまな人物の思惑が絡み合い、事態は混迷を極めていく。
■ 感想
本作は、現代社会が抱えるSNSの恐ろしさを真正面から突きつける、非常に衝撃的な作品です。ごく普通の一般人が、ある日突然、何の根拠もない情報でネットリンチの標的となる恐怖。主人公が味わう理不尽な怒り、焦り、そして社会から隔絶されていく絶望感は、まるで自分自身の身に起こっているかのように心に迫ります。阿部寛さんの演技が本当にすばらしく、単なる被害者としてだけでなく、人間が持ちうる身勝手さや弱さや葛藤もリアルに表現されており、感情移入せずにはいられません。
娘をめぐる描写や、終盤に向かって巧妙に仕掛けられた謎解き、そして犯人の真相が明らかになる展開には、最後まで目が離せませんでした。構成の巧みさが光り、サスペンスとしての緊張感が途切れることなく持続します。
近年、SNSでの無責任な発信が引き起こす社会問題に警鐘を鳴らす作品が増えていますが、本作もその一つとして重要なメッセージを発しています。しかし、観終わった後には、単なる警鐘ではもはや足りないのではないかという強い危機感を抱きます。人の良心に訴えるだけでは解決できないほど、私たちの社会は分断され、思いやりを失ってしまっているのかもしれません。
この映画は、他者を安易に裁くことの危険性、そして情報に流されやすい現代人の脆さを痛感させます。と同時に、「自分は大丈夫か?」と自らを省みるきっかけを与えてくれます。私たち一人一人が、SNSとの向き合い方、そして他者への想像力を問い直すべき時が来ていると強く感じさせられる、そんな深く考えさせられる一本です。
共感ありがとうございます!
今年は大東亜戦争関係の映画が多かったので、自分の得意分野(?)のミステリーやサスペンスの作品を観ると興奮度が120%ぐらいになります。その+α部分を差し引いても十分に楽しめる作品でしたね。
かつて大いに盛り上がっていたミクシーがいつの間にかオワコンになっていたみたいに、Xも仕組みの改善をしないと遠くない将来に消え去る運命だと思います。

