劇場公開日 2025年9月26日

「他責思考への批判的指摘」俺ではない炎上 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 他責思考への批判的指摘

2025年9月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

やや道徳&ネットリテラシーを啓蒙する要素が強かったんですが、けっこう楽しめました。
・SNSでデマを拡散しておいて「自分(俺)は悪くない」と逃げる他責思考なネット民
・自分の成功体験でマウントを取る老害な上司
・普段から自分の意見を持たず、周囲に流されて雰囲気で他人を評価し、陰で悪口を言う同僚会社員
・助けを求める人間を面倒臭げに切り捨てる所轄の交番勤務の警官や、ろくに調べもせず先入観で犯人を決めつける刑事
・独善的正義漢で私人逮捕、暴行傷害、殺人を行うYouTuberや犯人
など、現代社会の歪みを徹底的に並べて、嫌味っぽく皮肉に落とし込む展開は見ごたえあり。

ただ、時間軸をずらした表現で観客にミスリードさせる点と、犯人は割と早い段階で気づいてしまった。
原作未見で拝見ながら、同じ方が書かれた『六人の嘘つきな大学生』で作家さんの癖がわかっていたことと。
昔なら『獄門島』、最近だと『ブラック・ショーマン』でもそうであったように、それなりの存在感あって配役されている役者が、どうしても犯人だとまるわかりになってしまう。
そこが惜しいところでもありますが、仕方ないところでもありますね。

誰かに陥れられて、犯人にされてしまう主人公・山縣泰介を演じるのが、阿部寛なのがよかった。
彼が、普段からSNSをまったくやっておらず、未だにシンプルな「阿部寛のホームページ」を運営しているような(しかも元はファンサイトで譲ってもらったらしいw)ネットに距離を置いていることで有名な人物なのが、役にハマっていてすごく可笑しかったです。

そして、観た後しばらく、デマと偏見と差別と分断で混迷する日本の政治と、それに対する他人事で文句ばかりなくせに平然とデマと偏見と差別と分断をリポスト拡散し、罵詈雑言飛び交うSNSでの攻撃合戦・炎上ぶりを見て、本作中の「他責思考」の指摘があまりに的を射ていることに気づかされるという皮肉さから、後味を長く楽しむ羽目になりました。

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コージィ日本犬