劇場公開日 2025年11月21日

「残された時の中で、新しい貴重な時間を二人で紡いでいく物語」TOKYOタクシー hiroishiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 残された時の中で、新しい貴重な時間を二人で紡いでいく物語

2025年12月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

癒される

「パリタクシー」は観ておりませんが、リメイクするほどの物語となれば、話筋は安定しているだろうことと、倍賞千恵子さん(高野すみれ役)主演ということもあり、観賞。

山田洋次監督独特の動きも無く、少し長めで淡々と語るのみのシーンは、並みの女優さんでは難しそうですが、それを何カットも破綻なく演じ切れる倍賞さんはやはり素晴らしい。木村拓哉さん(宇佐美浩二)はSMAP時代のドラマの印象が強すぎて、それは2023年の「レジェンド&バタフライ」でも変わらずだったのですが、いい中年になってきましたね。すみれと宇佐美が横浜を歩くシーンは、老年の女性をエスコートするに十分な「男」が演じられており、最初にすみれをタクシーに乗せた時の宇佐美が「キムタク」だとするなら、物語が進むに従い、最後は名優「木村拓哉」(言い過ぎ?)になっていく印象でした。

タクシーって「個室」であるがゆえに、運転手と終焉の時を迎えつつある客が何時間も一緒に居れば、身の上話も出てくるのは自然な流れ。その過去をひとつひとつ辿りながらも、残された時の中で、新しい貴重な体験(時間)を二人で紡いでいく。それを我々は温かい気持ちで見守っていく、そんな物語でした。

余談ですが、すみれの辛い過去が回想されるシーンがあります。「女性に暴力を振るっても普通だったのが昭和だった」ことに否定はしませんが、そこには必ず弱い女性を守る強い男がいたのも昭和(の映画)でした。ふらりと渥美清さんか高倉健さんが兄役で現れて、DV夫をぶっ飛ばせば、すみれは罪を犯すことも無かったのになと妄想してしまうのは、倍賞千恵子さん出演映画をいくつも観てきたからでしょうか。

もうひとつ、少しネタバレ??最後にすみれが宇佐美に渡す大金ですけど、当初は劇中セリフにもあった「自分を応援してくれる女性の人権を守る団体」に全額寄付する予定だったが、その中から宇佐美にこの旅の御礼として数百万円程度を分けた。とした方が美しかったのではと。なんとなく、過ぎた大金を手にした宇佐美家の今後が気になるという余計な後味が残りました(笑)。

hiroishi
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