劇場公開日 2025年11月21日

「そこそこ泣けるいい映画風にはなっているのは元ネタのおかげ? 絵ハガキ風の東京•横浜の風景をバックに展開する作り物感たっぷりのお芝居にちょっぴり落胆」TOKYOタクシー Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 そこそこ泣けるいい映画風にはなっているのは元ネタのおかげ? 絵ハガキ風の東京•横浜の風景をバックに展開する作り物感たっぷりのお芝居にちょっぴり落胆

2025年12月16日
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鑑賞方法:映画館

元ネタの『パリタクシー』は一昨年に鑑賞済み(大いに感動しました)で、このリメイクの企画自体にあまり興味がわかなかったのでパスしようかなと思ったのですが、不謹慎な言い方に聞こえるかもしれないけど山田洋次監督の作品はいつ遺作になってもおかしくない時期にきてるとは思っているので「今のうちに観ておかなくちゃ」と鑑賞してきました。

あらかじめハードルを下げておいたせいか、恥ずかしながら、途中でハンカチを取り出すハメに…… とりあえず、元ネタをうまくなぞって泣けるいい映画にはなっているとは思います。でも、かつて毎年の盆正月に公開される寅さん映画に通っていた年配ファン(お前もそのはしくれだろ、とのツッコミはさておき)にはそれなりに刺さるかもしれませんが、少なくともオリジナルの『パリタクシー』を鑑賞済みの映画ファンにはうけない可能性が高いのではないでしょうか。

まずは、これ、半日で東京の様々な場所を巡って横浜へそして葉山へと移動する「時短かつ短距離ロードムービー」といった趣きなのですが、スクリーンに展開する風景が映画的興趣とはズレていてなんだか絵ハガキ風の美しさを体現しているようです。実はこの東京版、オリジナルのパリ版より10分ほど長いのですが、絵ハガキの枚数を増やしたから、はたまた、回想シーンを無駄に長くしたからそうなったの、とか言いたくなります。

まあでも、オリジナルのパリ版との決定的な違いは主演のふたりではないでしょうか。東京版では倍賞千恵子、木村拓哉というビッグネームを起用したにもかかわらず、共演による化学反応みたいなものがあまり発生していません。本家のセリフをなぞったセリフの応酬に終始している感じで、セリフ以外の非言語的なコミュニケーションにも見るべきものはありませんでした。セリフをなぞったと書きましたが、パリ版のほうにあった「怒りは人を年取らせ、笑いは人を若返させる」といった感じの人生の教訓めいた老婦人マドレーヌの名セリフが東京版のほうには出てきません(出てきたかもしれないけど印象に残ってません)。で、この笑いの話。パリ版のマドレーヌとタクシー運転手シャルルのふたりは笑顔がとてもチャーミングだった記憶があります。ふたりが打ち解けてくると、両者ともこのチャーミングな笑顔をふりまいてとても楽しそうでした。それも、ごく自然に。残念ながら、倍賞、キムタク組にはこの自然な「楽しそう感」を感じ取ることができませんでした(自分にとってはこれが決定的なポイント)。

あと、回想シーンに関しては、なんだか戦勝国フランスと敗戦国日本の違いが出てるような感じでまあ致し方ないと言えば致し方ないです。パリ版ではマドレーヌの最初の相手で子までなすのは、パリ解放に尽力したアメリカ軍の軍人でした。マドレーヌの母親は舞台演劇の衣装を担当していたと思います。このあたりの華やかさは終戦直後の東京では出せないでしょうね。あと、マドレーヌの息子は報道カメラマンになり、取材先のベトナムで亡くなっています。このあたりのメリハリの付け方もパリ版はうまくいっています。

やっぱりリメイクって、難しいですね。リメイクしたことの付加価値をつけないと、両方観た人にはただなぞっただけの安直さを簡単に見破られてしまいます。いいときの山田監督なら、もっと「抒情味」みたいなものが出せる演出をすると思ったのですが。まあでも、そもそもの話になりますが、あの『パリタクシー』をリメイクするという企画自体のハードルが高かったのでは…… でも元ネタのほうを観てない人たちにはそこそこ楽しんでいただけただろ、リメイクの意味はそこにあるのよ、と言われれば返す言葉はございません。両方観た身にとっては、オリジナルの『パリタクシー』って軽くやってる感じなのにけっこう傑作なのね、と再認識した次第でございます。

Freddie3v
おつろくさんのコメント
2025年12月19日

共感ありがとうございます!

パリタク未鑑賞なんですが、他の皆さんのレビューを読んでいると未鑑賞でも良かったかなと感じるようになりました。「馬鹿が戦車でやって来る」のリバイバルを子供の時に観て以来、人情味あふれる作品を作らせたら山田洋次監督の右に出る人は今の日本にはいないと感じているからです。ハンカチを絞る程には泣きませんでしたが程よく涙腺を崩壊させる映画でした。

おつろく
sow_miyaさんのコメント
2025年12月19日

共感ありがとうございました。
私もFreddie3vさんと一緒で、パリタクシーを上書きされてしまうのが嫌で、パスの予定だったのですが、妻に引っ張られて観に行きました。
結果、松竹映画として観る映画なんだなというのが感想で、自分は別物と思ってます。
パリタクシーは、老婦人との出会いによる主人公の人間性回復が主たるテーマだと思ってます。それに対して、今作は、キムタクも倍賞千恵子も、お吸い物級の薄味でしたね。

sow_miya
トミーさんのコメント
2025年12月19日

共感ありがとうございます。
一長一短あると思いますが・・パリ版はご恩の部分がしっくり来ないと言うか、東京版は製作意図からしてもう・・監督さんってコレ面白い、俺も撮りたいって考えるものなんですかね?

トミー
かばこさんのコメント
2025年12月19日

共感ありがとうございます。
私もパリタクシー鑑賞済みで、いろいろ同感です。
悪くはなかったですが。
腕を組んで、ってすみれさんから言わせたり、ディナーですみれさんがごちそうする、っていうのは私としてはなんだかなあ、でした。
丸一日付き合ってくれたが、ドライバーさんはそんな大金貰うほどのことしてないんじゃ?と思ってしまいました。
贈与税取られるにしても1億貰って、あの家族の人生狂わないといいなと思いました。

かばこ
さんのコメント
2025年12月19日

私も泣きました。
パラタクシーも泣きましたが、東京タクシーの方が感情移入しました。
やっぱり日本人なんですかね^_^

寅
ふわりさんのコメント
2025年12月19日

共感ありがとうございました。
何でこれをリメイクしたんだろ…と公開前からぼんやり思ってました。
セリフの応酬…でしたね。私も過去のエピソードより、タクシー内の会話にスッキリしない感がありました~。

ふわり
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