爆弾のレビュー・感想・評価
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原作の深みと映画の尺の問題における相克。
まず言えるのはプロの仕事だと言う事である。完璧な出だしと、最後の最後までエンターテイメントに徹した職人技の作品。佐藤二朗の独壇場である。しかしその凄みが最後のエンディングでは纏め切れずコントロールを失ったかのような収束を迎えたのは誠に残念。トップスピードのママ胴体着陸を試みてオーバーランした飛行機の様な終わり方であった。あの全速力感とあの過剰な盛り込みが無ければあの緊張感はあの時間に渡って維持は出来なかったであろうが、それにしてもつくづく映画の持つ2時間の壁という枠組みは大きな足かせでもあり、改めて作品を作品たらしめる偉大なる規範でもあるのだと言うことを思い知らされる。無理して突っ走れば収束せず、上映時間を意識し過ぎた作品にはインパクトは残せない。この二律背反は映画に限らず芸術作品に突き付けられる古くて新しい無視できない問題でもある。
それにしてもあの佐藤二朗演じるスズキタゴサクと言う無垢の視線からの知性や良心良識の持つ規範を凌駕した怪物観をもう少しコントロールして欲しかった。それゆえ原作が今回は強く気になる。読んでみてもいいかもしれないと言う気にさせられたエンディングであった。原作とセットでこの映画の評価がより拡大解釈されるとしたらそれはそれで新たな映画の在り方となる。
⭐︎4.3 / 5.0
これはもう佐藤二郎の作品で佐藤二郎の奇才っぷりにどっぷり浸かる覚悟...
いやー話術って本当に凄いよな。だって人のこといとも簡単に操ることが...
天才VS変態 極限のサスペンス
原作未読。
佐藤二朗、山田裕貴、染谷将太…この3人がメインで繰り広げられるサスペンス・ミステリー。演技合戦とでも言いましょうか、俳優陣の素晴らしい演技に引き込まれ、ストーリー、謎解きに夢中になり、異様なまでの没入感を味わえました。
佐藤二朗はさすがですね。この人が醸し出す不穏な空気、得体の知れない不気味さが作品全編に渡って漂います。劇中の人物達だけでなく、観客をも惑わせてしまう、まさに「怪物」そのものでした。
山田裕貴演じる類家と染谷将太演じる等々力も素晴らしかったです。ただの天才、優秀な刑事というだけでなく、どこか後ろ暗い側面を覗かせるキャラクターも非常に魅力的。こういう絶妙な人物描写が「この次、この人は何を言い出すのか?」といった期待に繋がってスクリーンに釘付けにさせられます。
3人がメイン…と言いましたが、他の俳優陣の名演も見逃せません。特に清宮役の渡部篤郎はMVPをあげたいほど。彼が置かれた立場、スズキタゴサクとの極限の会話劇、焦りや怒りを抑えつつも徐々に蓄積されるフラストレーションを見事に演じていました。
演技の話ばかりになってしまいましたが、演出においても作品をよりリアルで不気味なものにする効果があったと思います。オープニングのスタイリッシュさも、観客を一気に作品に引き込ませる興味深いものでした。
スズキタゴサクとは一体何者だったのか。現代社会における何かの暗喩でしょうか。卑屈で冷笑的で社会に絶望し、怒りを向けられても「欲望されている」と曲解する歪んだ精神…。
サスペンス・ミステリーとしてだけでなく、社会の暗部を映したかのような衝撃的な内容。名作です。
海外リメイク争奪戦になりそう
これは海外でリメイク権争奪戦だろう。そんな言い方不遜か。面白かった。原作がかなり面白いと噂だけどなるほど面白い(予告で流れてた『君のクイズ』然りちょっと前のミステリの映画化がわっとやってくる予感)。『ラストマイル』とかもそうだけどこの手のパニックサスペンスものを映画化するのが上手くなってきた邦画。爆発など相変わらずVFXはそんなにうまくはないにだけど、そんなところで爆発やるの!ここは省略するけどこっちは見せます!みたいな気合いが入っていた。
予告を見るに「密室の取り調べ室に現れる気の抜けた浮浪者みたいなのがやがてとんでもない連続爆弾魔の犯人とわかり、それを阻止すべく謎解きのゲームが始まる」風な設定だけども、それ以外の何が見れるかが見せ物としての勝負。
『殺人に至る病』の阿部サダヲと双璧とも呼べる佐藤二郎なのだけど、ほぼ喪黒福造のようなマンガキャラで阿部サダヲの方が数段上な感じはあるが、それは山田裕貴にも言える。予告編観て思った通り、ちょっと髪型やメガネ、衣装に盛ったわざとらしさがあり、それが佐藤二郎の盛り具合と同じなので演出なのだと思うけど、あれだけ盛ってるから興醒めか、あれだけ盛ってるからバタ臭くて面白いのかどちらかわからない。ただ自分の好みではない。しかし、プロットが面白い。だからリメイクしたくなる外国のプロデューサーが多いのではないか。それは原作の勝ちである。
もちろん取調室の中の悪魔(というか天才)、みたいな設定はいくつもあるが、それを日本でやるとこうなるか、という意味での展開は素晴らしい。澱みがない。最初の爆発、次の爆発、知恵比べ。隣りのお兄ちゃんがビクッ!ビクッ!としてたのは『ドールハウス」の時と同じで観客にフィットしている面白さ。
ただ、個人的にはお芝居がちょっとやり過ぎで興醒めしてはいる。この演出ならあんなサイコパス映画のようなノワール照明などしなくてよかったと思う。佐藤二郎もおそらくあんな照明になってると思ってないのではないか。テレビっぽく誇張っされた芝居にシネマチックな照明があってない感じ。あの照明ならもっとリアルに演じたらいいに、と思う。逆に染谷将太、寛一郎らが出てくるとホッとするような感じだった。
それはともかく『ダイハード3』『ユージュアルサスペクツ』『羊たちの沈黙』的な要素をかき集めた原作に乾杯!みたいな気持ち。観て損はなしの娯楽映画だった。
佐藤二朗演のスズキタゴサクを観るだけでも価値あり!
劇場の予告編で佐藤二朗を目にした瞬間
映画館へ足を運ぶと決めていた作品。
よく覚えられたなというくらいの膨大なセリフ量と
スズキタゴサクの話し方、表情に
どんどん引き込まれていきましたね。
素晴らし役者さんはたくさんいますけど
佐藤二朗以上にスズキタゴサクを
演じられる役者さんはいないです。
ありきたりですけど怪演オブ怪演。
例えるならこんな感じ。
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セブン→ケヴィン・スペイシー
羊たちの沈黙→アンソニー・ホプキンス
真実の行方→エドワード・ノートン
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等々力(染谷将太)、清宮(渡部篤郎)
類家(山田裕貴)と対峙するシーンは楽しめました。
また、倖田(伊藤沙莉)、矢吹(坂東龍汰)の
コンビもよかった。
この演技で日本アカデミー賞助演男優賞を
受賞できないならどんな演技をすればいいのかと
思わせる作品でした。
まぁ受賞することがすべてではないですけどね。
I AM HERO
ついに別次元を広げたか?
日本の映画は悪い意味でフィクションを貫く。映画とはフィクションであり、ならばフィクションらしく日本が得意の漫画的世界観を広げた設定や演技が売り物になっている。現実にはあり得ない所作、話し言葉、行動、思考。選りすぐりの美男、美女による夢物語のような恋愛や大げさな大声による怒鳴りやせせら笑いがよく浮かぶ。テレビのバラエティ番組やドラマのフィーリングを持ち込んで、お家芸の漫画的な世界を徹底的に追求するので、その俗っぽさに嫌気がさし、社会や現実との乖離が激しいため違和感を覚える人は邦画はレベルの低いものと思うようになっているのではないだろうか?ただ、それが好きな人もたくさんいるので、所詮あくまでも私個人の主観でしかない。
しかし、ついにそれらの漫画的リアリズムの映画史が良い意味で実を結んだような気がする映画に出会った。それが、本作だ。連続無差別爆弾事件の容疑者 佐藤二朗だ。
容疑者の佐藤二朗は漫画だ。しかし、漫画とはいえ凄い演技だ。異常者の役なので、狂った表情、異様な表情の切り替わりの妙、狂いの喋りの妙、言ってる内容のわけのわからなさが最高に素晴らしい。この漫画演技は極めて高度な演技であり、引き込まれた。しかも笑える。ついに漫画演技が芸術の域に達したのを目撃した。これは日本にしかできないもののように思う。
対する特殊尋問のプロの山田裕貴もキャラ設定は漫画だ。極めて頭がよく、ありえない推理能力、縦社会の厳しい警察組織で社会人としてもありえないぼさぼさの髪型から軽妙かつ無礼な喋り、所作に至るまで浮世離れしている。しかし、佐藤二朗を前に彼も極めて生き生きとしていた。実写という映画の表現形態を使った漫画なのに、現実離れしてるのに面白い。
これは、日本の漫画映画が堂々とエンタメとして存在しているのを間近にみたといえる。エンタメではなく、芸術なのかもしれない。それほど佐藤二朗の演技は魅力に溢れていた。
そして、偉そうに現実がどうのとか言ってる自分がよくわからなくなってきた。現実とはなにか。海外の映画は、現実をうまくとらえ表現していると思いこんでいたかもしれない。ハリウッド映画や韓国映画は面白いが、あれは現地人からしたら大げさで漫画的なのかもしれないではないか。海外の現地人は自国の映画の登場人物を限りなく現実に存在しそうな人の喋り、所作、表情としてみているのか?それが日本人である私にはわからないのに、日本は海外と比べ漫画度合いが高いとどう判断するのか?映画を通して現実の見方が揺らぎはじめる感覚を味わされ疲れを覚える映画でもある。佐藤二朗の演技は映画というフィクション、そう、おかしなことにそのフィクションを通して、現実認識を変えるほどのスペシャルなもので、最高に面白い。それほどずば抜けて素晴らしいものだった。
佐藤二朗さんの怪演劇場
果たして、いずこに最後の「爆弾」!!それが見どころ😉
一流の変態
とあるひとりの中年男性(スズキタゴサク)が酒乱により逮捕された。取り調べ中、その男は自分には霊感があると言い出す。そして、10時に秋葉原で何か事件が起きると言う。取り調べを行う刑事は相手にしなかったが、10時ちょうどに秋葉原ラジオ会館で爆発事故が起こった。さらに、次々に起こる爆発事故の予言をし、警察や一般市民は混乱に陥る。この男は一体何者なのか。この事件の犯人はこの男なのか…。
佐藤二朗さんは個性派俳優として有名である。本作では、彼の演技を十二分に堪能することができる。佐藤二朗さんが演じるスズキタゴサクは、一見酒好きな気のいいおっちゃんに見えるが、取り調べが進むにつれて彼の異常性は浮き彫りになる。無差別に爆弾を爆発させ、人を殺傷することに何の罪悪感もない。悪びれるそぶりを見せるがすべてわざとらしい演技である。どんな状況でもある意味安定した精神で訳のわからないことを言い続ける。本物の精神異常者を佐藤二朗さんは演じた。表情や細かな身体の動きなど、本能的に嫌悪感のする演技を骨の髄からしている感じがした。特に印象的だったのは、スズキタゴサクにとって真意に迫る部分の質問を刑事がしたときの反応である。化けの皮が剥がれかけ、本物の怪物が姿を現したような恐怖を感じた。それを佐藤二朗さんは、表情の強ばりや声のトーンのわずかな変化で演じていた。驚くべき演技力である。本作の出来の比重の半分は彼の演技力によるものであると言っても過言でないだろう。
ストーリーの構成も面白い。終始取調室の中で物語は進んでいく。その他の要素は、それに振り回される警察達の動き程度で、余計なものは登場しない。このシンプルな設定も本作の魅力的な部分である。
スズキタゴサクの話術とその話術にハマってしまう刑事とのやり取りを観て、観客はスズキタゴサクの頭の中を2時間観たような気持ちになる。なぜか分からないが、上映時間がどんなに延びてもずっと観ていたい気持ちになった。彼の言葉巧みな話術によるものもあるが、人間として魅力的な部分を持っているように感じた。それは彼がすべての欲望を最大限にして、それ自体に全くブレーキをかけない姿勢によるものかと思う。
本作の製作陣は、今年の傑作映画の「国宝」をライバル視しているらしい。両極端にあるような作品であると思うが、ホンモノという意味ではタメを張れる作品であると思う。そこでは本物の芸者に出会うことができたが、本作では本物の変態に出会うことができる。
佐藤二朗さんの圧巻の演技、代表作になるでしょう
間違いなく佐藤二朗の代表作
やっぱりジロー ここでもジロー
『スズキタゴサク』役を演じた『佐藤二朗』がサイコーだ。
彼無くして本作は成立せずと断じても過言ではない。
個人的には
『佐藤二朗』とエキセントリックさは強く結びついている、
とりわけドラマや映画では。
毎週「NHK」の〔歴史探偵〕で見ているのだが、
突如としてこのような狂気に囚われた態度に豹変するのでは、と
気が気がではないのは自分だけか(笑)。
もっともご当人、直近で流行りの学歴詐称でなければ、
信州大学卒業ののちリクルートに入社しているので、
エリートに近い路を歩んではいるのだが。
器物損壊と暴行で逮捕された『スズキ』が、
「自分には霊感があり、このあと直ぐに都内で爆発が起きる」と予言する。
その言葉通り起きた事件に警察は色めき立ち、
当初は所轄の『等々力(染谷将太)』が取り調べに当たり、
本庁から派遣された『類家(山田裕貴)』が後を引き継ぐ。
大柄な体躯と、ぬーぼーとした風貌に騙されそうになるが
『スズキ』の頭脳は明晰。
口八丁で、他人の心をいとも簡単に操る手管も持つ。
次々と起こる爆発を警察は止められない。
虚実ない交ぜの供述に、都合が悪くなれば「記憶を失くした」と嘯く『スズキ』。
スキにつけ込み、爆弾の在りかを聞き出そうとする怜悧な『類家』との
丁々発止の心理戦が始まる。
互いに挑発し、プライドを傷つける言葉の応酬。
比喩や暗喩を駆使した示唆の謎解き。
わくわく、ぞくぞくする、素晴らしい流れ。
そのやり取りの中では、
〔運命のボタン(2009年)〕でも言及された「利他」の命題や、
強い自己肯定感が人を見下す人間の普遍的な業、
或いは「トロッコ問題」の応用編などが俎上に乗り、
鑑賞者を含め煙に巻かれる。
140尺の半分以上は、閉ざされた取調室でのシーン。
当然のことながら顔のアップが多くなり緊張感も高まる。
仏頂面の『スズキ』と黙考する『類家』の対比。
そこに突如として乱入する婦警『倖田(伊藤沙莉)』の
激情に駆られた表情が人間らしさを醸し
却って安堵する「破」の効果。
素晴らしい演出。
中途、功を焦る警官が単独先行に近い行動を取るが、
これにも前段で説明が用意され、
ありがちな「間抜けな警察ありきで事件が混迷する」凡作とは
一線を画す造り。
次第に見えて来る結末は、
思いもよらぬ動機に驚愕し、
『スズキ』の行動には痛々しさも感じる。
世間への復讐と、他者への献身が混交し、
なんとも後味の悪い幕切れだ。
じゃあ始めましょうか、スズキさん
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