「See,I'm not a monster. I'm just ahead of the curve. 最大の爆弾は佐藤二朗の顔面力!💣💥」爆弾 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
See,I'm not a monster. I'm just ahead of the curve. 最大の爆弾は佐藤二朗の顔面力!💣💥
爆破テロを仄めかす謎の男“スズキタゴサク“と、彼を問い詰める刑事たちとの心理戦を描いたミステリー。
監督は『帝一の國』『キャラクター』の永井聡。
警視庁捜査一課強行犯捜査係の刑事、類家を演じるのは『万引き家族』『ゴジラ-1.0』の山田裕貴。
沼袋交番勤務の巡査、倖田を演じるのは『悪の教典』『すずめの戸締まり』の伊藤沙莉。
野方警察署の刑事、等々力を演じるのは『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』の染谷将太。
沼袋交番勤務の巡査部長、矢吹を演じるのは『十二人の死にたい子どもたち』『犬鳴村』の坂東龍汰。
不祥事の末に自殺した野方署の刑事“ハセベユウコウ“の娘、石川美海を演じるのは『見えない目撃者』『街の上で』の中田青渚。
類家の先輩である警視庁捜査一課強行犯捜査係の刑事、清宮を演じるのは『スワロウテイル』や『マスカレード』シリーズの渡部篤郎。
謎の男、スズキタゴサクを演じるのは『銀魂』シリーズや『ザ・ファブル』シリーズの佐藤二朗。
『ユージュアル・サスペクツ』(1995)のカイザー・ソゼ、『セブン』(1995)のジョン・ドゥ、『ダークナイト』(2008)のジョーカーなど、匿名系サイコパス映画の系譜に連なる。特に『ダークナイト』からの影響は顕著で、ジョーカーの取り調べシーンだけを2時間の長編映画にブローアップしたという印象の作品である。
等々力の言った「気持ちはわからなくもない」というセリフが本作のキーワード。共感性のある警察官と、「爆発したって、べつによくないですかぁ〜ん?」なスズキタゴサクとのバトルを通して、観客ひとりひとりの倫理観に揺さぶりをかける。
不思議なことに、鑑賞が進むにつれてどんどんスズキタゴサクを応援したい気持ちになってくる。というのも、警察も市民も世間も、そのクソさが強調して描かれているから。身を粉にして働いても上司からはパワハラ、大学生にはスマホを向けられ、組織は保身の事しか考えず、世間はルールを逸脱したものをその身内ごと完膚なきまでに叩きのめす。そりゃ、類家も等々力も死んだ魚のような目になるわ。
このヘイトコントロールにより、観客にタゴサクを応援したくなる気持ちと、そんな悪党を応援している自分に対する罪悪感を植え付ける。なかなか巧みな作劇だと感心した。
本作は職も家も家族もない、いわゆる“無敵の人“の凶行を扱った作品である。一方で、他者への共感性と自己肯定感が著しく低く、他責思考で、人が傷付く姿に快感を覚える匿名の存在が引き起こすこの爆破テロは、SNSやインターネットのメタファーであると読み解くことも出来るだろう。YouTubeにヘイト動画をアップし注目を集めるなど、タゴサクの所作にはネットに毒された今の世相がうまく反映されているし、同類と言える類家とタゴサクの取調室での問答の不毛さは、まさにネットのレスバそのもの。本作は、現代の日本における“爆弾“は我々ひとりひとりが手に握りしめている“それ“なのだと痛切に皮肉った、社会性を持ったカリカチュアなのかも知れない。
主演は類家を演じた山田裕貴だということになっているが、誰がどう見たってこれはスズキタゴサクを演じた佐藤二朗の映画である。
彼のオーバーアクトには辟易させられることも多いのだが、今回に限ってはその過剰さが完全に功を奏している。というのも、佐藤二朗が演じているのは“スズキタゴサク“ではなく、“スズキタゴサクを演じている男“だから。“男“の演技が過剰なのはスズキタゴサクというサイコパスを演じているから、というこのワンクッションにより、佐藤二朗の臭みが完全に取り払われている。これはなかなかの発明である。
この臭みから解放された佐藤二朗の存在感たるや。演技の質感は福田雄一作品などのコメディとほぼ変わらないのだが、それが完全にホラーとして作用している。
顔面力も凄まじく、どの爆破シーンよりも彼の顔面どアップの方が衝撃が強い。10円ハゲ、汚い歯、光のない目、どれもがタゴサクの凶暴な空虚さを強調している。
山田裕貴、染谷将太、渡部篤郎など、彼と対峙する役者は皆クセモノ揃いなのだが、それでも最終的に印象に残るのは佐藤二朗ただひとり。並居る名優を蹴散らした彼の演技は、間違いなく邦画史の歴史に残ることだろう。
火の点いた導火線の様に、結末に向かって一気に突き進む。勢いが良すぎるため観客が理解するより先にストーリーが進んでしまう事も度々あるのだが、とにかく次から次へと攻め寄せるエンタメの波は圧巻で、137分というランタイムが一瞬で終わってしまう。この面白さには正直驚いた。
『国宝』(2025)の大ヒットもあり今年は「邦画の当たり年」だとよく言われるが、確かにそれは事実かも。今後もこのレベルの作品を生み出し続ける事が出来れば、マジで日本映画の黄金時代がやってくるぞ!
※最後にひとつだけ苦言を。エンディングに流れるエレファントカシマシの「I AM HERO」、あれは無いわ…🌀エレカシに他意は無いが、曲の内容が映画の内容と合ってないよう。このお話にHEROなんて居ねえんだよっ!!
レコード会社が金出してるから仕方ないのかも知れんが、邦画はエンディング曲への気配りが無さ過ぎる。スタッフロール込みでひとつの映画なんだから、そこで世界観ぶち壊しのJ-POPをぶち込まれると一気に冷めちゃう。エンディング問題は日本映画界の今後の課題かもね。
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