「日本映画のクセ爆弾」爆弾 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
日本映画のクセ爆弾
自分にとって山田裕貴は『海賊戦隊ゴーカイジャー』なしでは語れない。本当はその話題は避けた方がいい面もあるがまあ許して。
ゴーカイは周年記念作品で結構面白かったのよ。山田裕貴という人はゴーカイブルーで当時から演技はうまかった。戦隊は年によって演技力低い人がいることも割とあるんだけどゴーカイの年は全体的にうまく、山田裕貴はその中でも冷静で熱いブルー感があり、ゴーカイを盛り上げてくれた一員だったのよ。
『テン・ゴーカイジャー』発表の際、既に山田裕貴は売れてきていたので流石に出れないんじゃないかという予想の中、10年ぶりにオリキャスが集まった時も出れたんだー!っていう衝撃、感動が大きかったのよ。そして残念ながらその後にシルバーが逮捕されてこの戦隊は今後揃うことはないだろうという悲しみも含めて色々な思いがある。
よく知らない若手イケメン俳優なら「へえ人気なんだー」ぐらいで終わるんだがほぼ一年追った特撮出身者はいつまでたっても卒業生なのよ。あの代の卒業生活躍してんじゃん!みたいな。
だから、たまたま見つけた「大ヒット御礼!ラスト舞台挨拶」のチケットがとれたので来たわけよ。
山田裕貴は舞台挨拶で笑いもとっていたし、初号試写の時点で作り手側の反応も良かったと語ってくれたし、25億円を超えたと司会者に言われた時も「まだまだ行ける」と強気な姿勢を見せてくれていた。
で。映画の内容はどうだったかというと。
山田裕貴、佐藤二朗ほかキャストに文句はない。
ただ演出面において日本映画のクセみたいなものが気になった面はある。
日本映画のクセ爆弾一覧
- 俳優の演技を撮りたいあまり俳優のアップが多くなりがち。もうちょっと引きが多くてもいい。カメラをぐるっと回転させたり覗き窓から取り調べ室を真横から観るショットを入れたりかなり工夫は凝らしてくれていたけれど。
- 後半で行くシェアハウスがセット感というか作られた場所感がある。ゴミの散乱の仕方含めて。玄関入ってすぐ横の鏡か何かが綺麗すぎる気がした。
- 群衆の演技がわざとらしく感じる場面がある。都内で爆発事件があって次の日の閉鎖されてる阿佐ヶ谷駅にあんなに「早く入らせろ!」的に詰め寄る群衆が来るか?
- 特に前半、不安をあおる為に頻繁にカメラを揺らしていた。グラグラして観にくい。
ここら辺のクセは他の日本映画でも感じるのでたぶん根深い何か、日本映画のクセ爆弾があるのだと思う。観る側が色々観すぎて厳しくなっていたり機材がよくなったぶん粗が目立つようになったりしてるのかもしれない。
あとこの映画に関しては、どうしてもわざとらしさというか、展開の為に人が動いているような感じが出てしまう。シリアスな感じで進むからかえっておかしい感じになる。
展開ツッコミ爆弾一覧
- タゴサクが動画で視聴者が増えるとそれが起爆装置になる的なことを言って、若者が次々と登録解除していく場面があるが、あんなに胡散臭い動画をそんなにすぐ信じるか?
- そもそも理系の大学を出たからって、あんな性能のいい爆弾を作れるもんなんか?
- 元々の計画を企てたシェアハウスメンバーが爆弾を作ってそれを色々な場所に設置する→石川息子がメンバー毒殺→石川ママが息子を刺殺→石川ママがホームレス時代の知り合いのタゴサクに罪を被ってとすがる→タゴサクが計画を自分のモノとして準備。動画を撮り予約投稿して警察に捕まった際のやり取りも考えて仕込む→自販機破壊してタゴサク捕まる→爆発が起きる。ここまでの流れが「そんなに計画通りに捕まって計画通りに爆発する?」感があるのよな。
- ウジが沸いたシェアハウスメンバーの死体、爆発で足が吹っ飛んだ警官の足から血がビュー飛ぶ場面をわざわざ映してPG12な刺激を付け加えていたが個人的にはあそこら辺も作り物感を感じたのでもっとサラッと流してくれても、なんなら映さずとも良かったように思う。
ここら辺の一連のわざとらしさ、作り物感が気になった人は心の中のツッコミ爆弾を小出しに爆破させて楽しもう。
映画自体のツッコミどころを役者の演技力で補った感がある。いや、展開自体も面白いは面白い。
グッド爆発爆弾一覧
- 佐藤二朗が演技力爆発させてタゴサクを快演してくれたことで面白さが増した。福田監督以外の佐藤二朗をもっと広げないと。
- 前述したように個人的に観ていた特撮出身者の活躍は嬉しい。まあ山田裕貴の見せ場は予想以上に後半だったけど。
- この手の爆弾サスペンス映画に挑んでくれただけでまずその志がいい。そもそも脚本や演出が悪かったらもっとひどい映画になっていた可能性があるし、取り調べのやり取りメインなこの題材だとヤバいB級映画として不名誉な爆発を引き起こしていた可能性すらある。それを回避できてるだけですごい。
- タゴサクのクイズとそれを読み解く類家のやり取り自体は面白かった。丑三つ時の話題からわざわざ時間の十二支表をプリントアウトして説明してくれる類家の親切さ。
- 染谷刑事の演技の安心感。あの刑事が「気持ちは分かる」と言ってくれたらそれだけで同僚としてはありがてえ。
- 日本映画あるあるだった画面が暗すぎ問題は夜の場面が多い割にはだいぶ克服してくれていた。
- タゴサクのホームレスの命も平等に大切なのか?みたいな問い自体は良い。だからこそホームレスもシェアハウスももっと汚して良かったと思う。綺麗すぎる。逆にむしろもっとアートにしてもいいくらい。
アニメ以外の日本映画ももっと盛り上がって欲しいのでとりあえずこの映画がある程度ヒットしたのは良かったと思う。
映画は「最後の爆弾はまだ見つかっていない」というセリフと共に終わる。物語の趣旨としてはタゴサクの恐ろしさや捜査の限界を示しつつ、今後も社会的弱者が抱えている不満の爆弾はいつ爆発するか分からない、ということを示している。
個人的に感じた日本映画のクセ爆弾はなんとか俳優パワーでギリギリごまかせたような気がするけど、今後別の日本映画で「豪華キャストで金をかけて作ったけど観客の不満大爆発で大コケしました」みたいなことがまた起きそうだなと感じた。
たぶん監督、演出家、脚本家、プロデューサーあたりを個人攻撃してもどうにもならないぐらいのもっと深い爆弾。
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