「トロッコ問題をやりたかったのに、それを避けたせいで破綻した映画」爆弾 ネココさんの映画レビュー(感想・評価)
トロッコ問題をやりたかったのに、それを避けたせいで破綻した映画
原作未読。論理・倫理・心理戦が好きなので期待して観たけど、肝心の“選択”が物語の中でまったく機能しておらずモヤモヤが残りました。
◯一番致命的なのは「選択させない」演出
序盤の「子ども vs ホームレス」の場面。
本来は“どちらを助けるか”というトロッコ問題の枠組みなのに、刑事側が犯人の問題を最後まで確認せず、早とちりで片方を救助。
結果、観客に選択の重さが伝わる前に片方が勝手に犠牲になるだけで、テーマが完全に空転してしまった。
さらに犯人は「人間は心の奥で命の重さを差別しているだろ」と言うのに、その説得材料になるはずの“選択シーン”が成立していない。
ここがズレたまま進むので、その後の心理戦も説得力が弱い。
◯ギフテッド枠の刑事の描写がちぐはぐ
作中では“ギフテッド”とは言われていないが、明らかにそのポジションのテンパ刑事。
猫をかぶっている設定で、対戦相手が変わった瞬間、不遜で自信家キャラにスイッチ。
最初からその態度で行けば、上司との関係性や初戦の敗北理由も自然になったはず。
さらに、
「あなたでは勝てないけど他の人よりマシです」
→じゃあお前がやれよ。
と観客全員が思うような謎の会話が続き、物語の運びのためにキャラが不自然な動きをしている感が強かった。
◯犯人の“倫理観”の主張も構造がブレている
犯人の例え話にあった「結果が同じならボタンを押して金を受け取った方が合理的」と考えている(と思われる)テンパ刑事と、「何もしないで犠牲が出る方が“正義寄り”」と主張したい(のであろう)犯人。
本来なら“自分の手で引き金を引く” vs “不可避の災厄を見届ける”という構造にすべきなのに、
そこへ 金の話を混ぜたことで思考実験が崩壊。
論点がずれるので、両者の対立軸が最後まで噛み合わない。
◯全体として
・警察上層部の無能描写が浅い
・上司のメンタル崩壊も唐突
・謎解き部分も後半は説明だけで終わってしまう
テーマの根幹にある「選択の倫理」がちゃんと描かれていればもっと面白くなったはず。
“挑戦しようとして逃げた映画”という印象が残りました。
一度しか観ていないため、詳細に間違いがあったらすみません。
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