「期待し過ぎたのか?」爆弾 PECOさんの映画レビュー(感想・評価)
期待し過ぎたのか?
致命的だったのは山田演じる刑事のキャラの一貫性の無さとそれに付随した終盤のご都合展開だ。
この映画の醍醐味は、怪物的な犯人を知力に絶対的自信を持つ刑事が考察と推理で対抗するという心理戦だ。次々犯人に食い物にされていく刑事達の最後の砦として山田が立ち向かうのだが、この山田は冒頭、もじもじしたキャラだった。それが事件の推理をすると生き生きしだし、ついに自分が尋問する番になると、まるで別人のような口ぶりで犯人を圧倒する。キャラの一貫性の無さと言っているのは、この流れの事ではない。寧ろこの流れは激アツ展開なのでもっとしっかりグラテーションを描いた方がカタルシスが高まると感じた。まあ、でもあれくらいでも全然文句はない。問題はその後だ。あれほどまでに犯人を口先で転がしていた頭脳派山田が、ある大惨事を機にまるで白旗を上げたかのように犯人の目の前で狼狽えだす。私はこれは犯人を騙す芝居をしているのだな、と最初は思った。あれだけ心理戦に長けていた山田が突然こんなキャラ変はありえないと思ったからだ。けれど結果的には本当に狼狽えていた。普通あの部屋の外で犯人の見えない所で、狼狽えないか。
だが、そうせざるを得ないわけが存在したのだ。理由はいたって簡単。物語の都合上、そうしないと次の展開へ進めないからだ。山田のその狼狽えを見た犯人が話し出す事こそ、この物語のテーマだからだ。この流れがないと話が続いていかないから、だからご都合的にキャラの一貫性を欠いてまで、あそこで狼狽えさせたのだ。そこからはもう心理戦でもなんでもなく、ただの火曜サスペンス劇場へ変わり果てた。実はこうでした、実はこうでした、の連続なだけで特段驚く何かが用意されていた訳でもなく。
あ、そうそう、少し話は脱線するが、実はこうでした映画が好きな人は『刑法39条』を観た方がいいです。容疑者Xの堤真一が最高とか言ってる人にも観て欲しいですね。本当にそうかな?ってなりますから。
まあ、てなわけで、後半に進むにつれ尻すぼみの典型的な邦画でした。ただ、このテーマを言いたかったんだな、という強い思いは佐藤次郎の快演を通してビンビン伝わってきました。これを体感するだけでも料金の価値はあるのかもしれないですね。
けれども映画自体は凡作。
本作鑑賞後、消化不良を起こした皆さん、是非『刑法39条』を。
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