「「すごい映画」」爆弾 かなさんの映画レビュー(感想・評価)
「すごい映画」
単なる酔っ払いオヤジスズキタゴサク(佐藤二朗)がある事件をおこして、等々力(染谷将太)の取り調べを受ける。スズキタゴサクの人を食ったような大胆さと、なにか異様な佇まい、爆発を予知できるという非常識な言動が、すでに異様な緊迫感をはらんでいた。そしてスズキタゴサクのたわごとが真実になり、2件の爆発が起きる。その時のショック。
凶悪犯罪がおきたことで、捜査は警察署から警視庁に変わり、担当も清宮(渡部篤郎)と類家(山田裕貴)の手に移り、等々力ははずされる。ここに警察署と警視庁の捜査権の上下関係が凝縮されていて制服組の警察官(伊藤沙莉)と(坂東龍汰)は指示に従った動きしかできないもどかしさからの野心を抱いていく。
スズキタゴサクは清宮に「人の心の形がわかる」という九つの尻尾ゲームを提案する。最初は余裕で答えていた清宮が長谷部の名前が出たときに絶句し、ゲームが終るころにエキセントリックになり崩壊する。
そして取り調べは類家に代わる。山田裕貴のとてつもない頭の良さ、佐藤次郎との頭脳戦の戦い、取調室という密室の中で繰り広げられる物凄い緊迫感、ヒントや考察、苛立ちと余裕、二人のアップの映像、お互いの本心をさらけだしていく生々しさ、見ていて苦しくなる、緊迫感が倍々ゲームでヒートアップしていく。
スズキタゴサクの動画配信。大衆の心の動きが如実に描写される。最初は信じない、しかし一旦爆発が起きるとパニックになる。SNSの見事な活用だ。
警察の大規模な人員を動員した捜査、爆発の被害のスケールの大きさは映画自体のスケールも大きくする。正直これほどまでの邦画を見たことはない。
長谷部の名前が出たことで長谷部の息子、母親がどのように動いていたのか、この映画の更なる膨らみがうまれ、弱者切り捨てという重層的な意味合いを持つにいたる。
ミステリー、サスペンス映画として桁違いの迫力をもった映画であった。緻密に計算されつくした脚本の見事さ。演出と俳優の演技の見事さ。アップを多用し緊迫感を高めたカメラ、たえず薄暗い取調室で異様な空気をかもしだした照明、不気味な音響、すべて含めて一級の映画にふさわしい。圧巻の137分。私はただ爆弾すごい、爆弾すごいと、言うしか術がないし、皆さんに「爆弾」見てくださいとしか言えません。
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