「よかったです」爆弾 aooniさんの映画レビュー(感想・評価)
よかったです
爆弾魔と思われるスズキタゴサクと交渉役の刑事のやりとり・心理戦が面白いです。
主演は刑事の山田裕貴さんということですが、明らかにスズキ役の佐藤二朗の方が主役で、その怪演を観に行くようなもんですね。演技はどちらも素晴らしかったです。
いわゆるジョーカーものとでも言えばいいんでしょうが、そういう作品が好きな方にはお勧めしたい作品です。
問題はスズキタゴサクの背景がよくわからない点で、動機などがわかりづらく、なぜあのような行為をして、警察をあざ笑うような態度をとったのだろうと疑問が残ります。
端的に言えば、世間から見捨てられて誰一人頼る人もなく、さんざん失望をしてきた男、自分なんかどうでもいいと悲観していたスズキタゴサクが、最後にたった一人の信頼した人に裏切られ、そしてこの世界を呪い、絶望したということなのかもしれません。
または頭がよくて周りがバカばかりに見える、ひどくつまらない世界を生きてきたスズキがゲームとしてこの世界を壊して楽しんでやろうと考えたのかもしれません。
もちろん、そうした考えを一般化するために、あえて動機が不明瞭なのかもしれませんし、むしろ背景を描かないことで、そういったサイコな部分を楽しむ作品なのかもしれません。
「命は平等ではない」というスズキタゴサクの言葉からわかる通り、浮浪者など社会的価値の低い者よりもこどもや権力者などの方がよほど価値が高く、綺麗事を並べても現実には皆それを受け入れている。
法律は必ずしも正しいとは限らず、悪者を守ることもある。警察はその法律によって縛られる駒でしかない。または人間はルールから外れることを許されないということでしょうか。
誰しも失望することがあるし、追い詰められれば犯罪も起こします。誰の心にも悪はあるし、破壊的な心や快楽的、狂気的な部分もあるでしょう。ほとんどの人が一線を越えないのは愛されて育ったという要因があるからかもしれません。保身のためかもしれませんし、または法律やルールに縛られているからかもしれません。教育的な部分もあるでしょう。
歯車が狂えば誰しもが転落してしまう可能性もあるのかもしれません。
「なぜ悪いことをしちゃあいけないの?」
映画を通して様々なことに想いを巡らせられるのも楽しいです。
原作はベストセラーになったそうですね。私は全く知りませんでした。続きもあるようですし、続編があるのかなーと楽しみでもあります。
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