「「羊たちの沈黙」とどうしても比べてしまう」爆弾 はなてんさんの映画レビュー(感想・評価)
「羊たちの沈黙」とどうしても比べてしまう
巷のインフルエンサーがお勧めするほどの面白さは感じられなかった。
理由は、警察の「真剣さ」とか被害者の「命の重み」みたいなものが軽い感じがしたから。
多分、理由の一つはスマホのせい。
スマホが出現した時代の映画の(物語の展開)は非常に高速化してしまった。
この映画内では犯人の証言はスマホで一瞬で関係者に伝達、共有され、また警察の判断の正誤の結果はすぐに分かるようになってしまった。
つまり本作には登場人物の(時間経過による微妙な心理の変化)を描く時間的な余裕が殆ど無いのだ。
本作の登場人物が問題に直面した際に抱える葛藤や迷いなどが表現されることはなく、あるのは「犯人の出すクイズにうまく答えられなかった刑事の悔しさ」みたいなものばかりだった。
ではスマホがない時代の映画ではどうだったのだろうか?
例えば「羊たちの沈黙」では変質者のレクターの証言に警察はヘリや車を使って長距離を右往左往させられ、無駄な時間を費やしながら事件を追っていった。その間に状況は刻々と悪化する方向へと変化していった。
また(変質者に幽閉された政治家の娘が感じる死の恐怖)を思う存分感じることができたのも(命というロウソクの火が時間とともにジワジワと消えてしまう)というような時間的な焦燥感を観る者に与えたからだろう。
本作「爆弾」では犯人の供述の後すぐに犯行現場から電話が鳴ったり、メールが送られてきて供述や警察の推理の答え合わせが行われる。これが観ている僕としてはあまり面白くなかったのだ。
映画内で爆発により死傷し人たちに対する悲しみの感情は殆ど湧かない。何故なら、その人たちは物語を描く作者の都合で死んでいっただけに過ぎないから。
本作はそういった「命の重み」や「警察官の深い葛藤」をそんなに感じる事がなかったから、そんなに高くは評価できない
でもこれがスマホ時代の物語の作り方の一つなのかも知れないとも思う。
謎が次々と出題されて直ぐに答え合わせが行われることに人の脳内はドーパミンを放出し満足する時代なのだ。
かく言う僕もそうだ。話題の映画を観て、直ぐに解説動画を漁り答え合わせをしているから。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
