「爆弾感想」爆弾 asaさんの映画レビュー(感想・評価)
爆弾感想
カリカチュアされたリドラーよろしく、愉快犯を興ずる容疑者。
容疑者はスズキタゴサクと称して捜査官らの価値観を揺さぶる。
誰もが心のどこかに潜む黒い部分(本作で言う、人の中にいる囚人?だったか)を証明してみせるタゴサクの痛快っぷりがおもしろかったです。
そして、中盤の清宮からの用意周到に準備されたことを意味する整髪の指摘や、後半類家に環状線爆破予告の曖昧さを指摘されたあたり(だったか?)の、その想定外の詰問でタゴサク称する、ある中年男が一瞬垣間見える本性が印象的。
で、それは取調べ中ずっと類家を刑事さんと呼び、最後移送されるときに真顔で「類家さん」と捨てゼリフを残して去る所など、人物の多面性が顕著に表現された白眉な所でした。
こういった題材で俳優さんが見せる犯人風情のオーバーアクトは好きじゃないけど、見終わってみると演出と相まりよく計算されたお芝居だと勝手に感じいりました。
そういう意味じゃ清宮(渡辺篤郎)の抑制の効いた静のお芝居の対局も興味深い所でした。
世知辛い世の中なんてよく言ったもので、
捜査を煩わしいからと妨害撮影する金髪の若者(また警官も対抗する術を心得ている)、
そもそもの発端となった捜査員の下世話なスキャンダルを金欲しさでリークする医者、
それを鬼の首取ったかのようにまくし立てるマスコミ、
煽られるがまま興味本位で回される動画再生等・・
ほんとうに薄ら淋しさを通り越し、ハードな世の中を写してます。
そこに不本意にも飲み込まれていき、ホームレスとなったタゴサクと称する中年男と明日香(たち)。
そのなかで明日香がタゴサクに譲った中日の帽子は本作の唯一の温もり。
取りこぼされた被害者(≒加害者)の二人の幾ばくかの感情のつながりは一縷の光でした。
(類家の指摘で)息子を殺めた明日香は男を頼り助けの懇願をするが、それを裏切りと取違えてしまうタゴサク。
被害者はどこまでも被害者、映画は二人にほんとうに冷徹に描いていたように思います。
「もういいや」はそんな世の中を諦めた中年男の悲しい絶唱でした。
最後は自販機の音声で締めくくってます。
人の感情の発火スイッチはどこに何時何処でどう作動するかか分からない。
第3ステージはそんな世知辛い世の中の一員である自分に投げかけられたようでした。
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