劇場公開日 2025年10月31日

「タガが外れる時」爆弾 ゾアさんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 タガが外れる時

2025年11月7日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

知的

 今年は社会性のある邦画の当たり年だ。国宝、フロントライン、でっち上げ、宝島、いずれも心にずしりと来る作品だった。(あと軽いけど個人的にゴーストキラーも当たり)
 そしてこの作品である。今のところ今年一番だ。エンタテインメントとしても一級品だし、その上重いものを投げかけてくる。
「人を殺してはいけません」とか「命は平等です」という建前はみんな一応はわきまえているが、現実ではそんなものお題目に過ぎないという事を知っている。劇中、スズキタゴサクが羅列する人を殺したい理由の中に、誰もが一度は思ったものがあるはずだ。でも大半の人は本能的に人殺しを忌避するし、人の社会という共同生活を破壊してしまっては、自分が生きづらくなってしまう。類家のようにしっかりした意思でそれをしない人もいるだろう。そうやってモラルというものは守られている。
 でも、モラルなんか自分を守ってくれないと見切りをつけた人は、タガを外し、破壊に走る人も出てくる。そういうタガの外れ方がだんだん増えている気がする、そんな危うさをを見事についた作品だと思う。見つかっていない爆弾は、誰もの心の中に潜んでいるに違いない。
 それにしても、今年は山田裕貴の当たり年だ。「木の上の軍隊」「ベートーベン捏造」そしてこの作品、いずれも名演だ。特に目力がいい。この3作品をほぼ同時に撮っていたらしいから、その集中力も大したものだ。吉沢亮の国宝がなかったら、アカデミー賞の最優秀主演男優を取ってもおかしくないと思う。
 そして佐藤二朗。彼が主演と言ってもいい。過剰なしゃべり方のウザイ演技のおかしさが売りだが、それを凄みにまで昇華させていた。あの膨大なセリフをすべて頭に入れて撮影に臨んでいたそうで、パンフレットでは誰もがその技量を絶賛していた。
 彼の演じるスズキタゴサクは、相当の切れ者で、人心掌握、操作にも長けている。そんな彼がなぜホームレスに転落してしまったのか、きっと壮絶なドラマがあったに違いない。その果てに身に着けた不気味さを、佐藤は見事に演じていた。最優秀助演男優は間違いないと思う。

 余談ですが、隣の席のおじさんが、タゴサクのおちょくりにいちいち反応してくすくす笑っていた。この人とは友達になれないだろなと思いました。

ゾアさん
uzさんのコメント
2025年11月7日

スズキは本当にホームレスなのでしょうか。

元々は「家で酒を吞みながらドラゴンズの試合を見てた」と言っており、炊き出しの場面は映像として出ますが家がない確証にはなりません。
どころか、ミノリの件もあるので映像で出たから真実、とも言い切れない。
…などと考えていくと、彼のことは本当に何一つ分かっていないように思え、底知れなさを感じました。

uz
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