「気持ちを否定はしないが、俺はやらない」爆弾 かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
気持ちを否定はしないが、俺はやらない
めっちゃ面白かった!
原作は未読です。
長谷部の不祥事に対して等々力が口にした「分からなくはない」。
そういう気持ちになることもあるだろう、否定はしないが、俺はやらない。
そういうことだ。
そして、世の中の大方の人は、不満はあっても、世間と折り合いをつけて生きていることに大きな安堵を得ており、そういう生活を捨てようとは思っていない。
好きではないかもしれないが、嫌いではないのだ。
タゴサク氏は一連の犯行を吐いた後、署内ですれ違う等々力に、自分とお前は同類、俺はお前のことが良くわかっている、とばかりに自信たっぷりに畳みかけるが、等々力の答えは「そうだ、だが俺はそういうのは嫌いじゃない。」
タゴサク氏は一瞬、え、そんなぁ、という顔をする。
自分は、自分と似た境遇の名もなき多くの人々、名前を知っている人の中では等々力からの、大っぴらにできないが強固な共感とリスペクトを得るダークヒーローだと思っていたのに。
俺ってひょっとしてピエロ? という気持ちの揺らぎが見えたような気がした。
言葉巧みに若い刑事を操り、ひょうひょうとした外面と違って実は自分の頭脳に絶対的な自信があり、周囲を見下しプライドが高い類家を、わざわざその他大勢のように名前を覚えていないふりをして苛立たせるタゴサク氏は、人の心理に詳しく、頭が切れて行動力もある。
なのに、育ちやら見かけやらのせいで社会からも世間の人々からも軽んじられ馬鹿にされ踏みつけられてきたのだろう。最初に取り調べをした所轄署の等々力が、卓越した能力がありながら不遇なのを見抜き、目を付けた。同類感をチラ見せして等々力の共感を掴んだと思って調子に乗った部分もあったよう。
類家が指摘した通り、この男はとても分かりやすい、というかわざわざ分かりやすい言動でもって世間を挑発し愚弄しているよう。
自己顕示欲の塊のようだが、自分を侮ってきた世間を見返し手玉に取る快感は、自分が仕組んだことを解説付きで提示して自身の知力、能力の高さを誇示することで高まると思う。
やがて、連続都内爆発事件は、明日香がタゴサク氏に「自分たちのヤラカシを被って欲しい」と依頼していたことが発端で、タゴサク氏は主犯ではなく他人の描いた絵に便乗、若干の加工を施しただけ、というのが分かる。
明日香のあまりの厚かましさ、というかタゴサク氏に対する舐めっぷりが度を越していて怒りを覚えてしまった。他人の私ですらそうなので、彼としては呆気にとられた後、ふつふつと怒りを滾らせたと思う。信頼していた分、感情が激しくなっただろう。バカの振りをして話を飲んだ体で彼女を爆弾魔の実行犯の一人にする、さらに彼女の息子殺しと彼への仕打ちをあからさまにしてやるつもり。そして、それらも一緒くたに纏めて世間への復讐を果たすことにしたのだ。
なにしろタゴサク氏は、犯罪を犯して世間に反旗を翻しても、守るものどころか失うものすらない「最強の人」なのだ。極刑ですら恐れていないかも。
そして、まだどこかに、彼しか知らない爆弾が眠っているらしい。
タゴサク氏の、世間と世間の人々への復讐は、成功したと言えるのではないか。
だとしても、彼は、承認欲求を拗らせて一人で勝手に踊っているピエロかも、という気もする。
佐藤二朗のスズキタゴサクが、この人以外にできない名怪演。関わる刑事たちが皆キャラが立っておりそれぞれ熱演で、タゴサク氏との取調室の攻防、言葉一つ聞き逃せない心理戦に息詰めて見入ってしまう。爆発のバリエーションが、回を追うごとに規模が大きくなってそれぞれ見せ場があるのでダレない。駅の自動販売機が次々爆発するなんて、自動販売機で飲み物を買うのを躊躇しそう。そして単純に謎解きも面白かった。
映画長いにもかかわらずぐいぐい引き込まれて飽きなかったが、巡査二人の行動も入れているので欲張りすぎて見ている側の情報処理能力が追い付かない気もする。小説なら問題ないだろうが、映画なので涙を呑んでどこか少し削ったら良かったかも。
山田裕貴のお父さんは、昔中日ドラゴンズの選手だったというのも楽屋落ちですかね
タゴサク氏の、折られた指痛すぎ!
類家の推理のシャーロックばりのキレのよさと清宮との信頼関係がいい感じだし、能力に一目置いている等々力とは、良い相棒になりそうな予感。
清宮と等々力と類家、巡査ふたりをメンバーにしたシリーズもの希望。
タゴサク氏のゲームで今回は弄ばれてしまった類家だが、冷静沈着洞察力ピカイチな等々力と顔つなぎができた。残りの爆弾をめぐっての続編があっても良いと思う。
今回も素晴らしい考察で共感です。
タゴサクは、失うモノがないから怖いモノがない、自分の中にため込んだ鬱屈した感情を世間にぶちまけるいい機会が来たと思って話に乗った(乗った振りをした)んだと思いました。
かばこさん、こちらこそありがとうございます。鶴久のあの言葉、私は(この人何言ってんだろう)と思ってすぐ忘れたんですが、鶴久の性格からしたら、かばこさんの分析の通りと思います。本当に鋭いですね。
こんばんは〜。共感コメントありがとうございます。
みのりちゃんって誰だっけ
と記憶力のなさを加齢のせいにしています😁
佐藤二郎さん、いつもの演技でしたね。
山田裕貴さん、お父さんがそうでしたね。
楽屋落ちですね😊
シリーズは原作しだいだとおもいますが、じさくはぜひ観たいてすね
かばこさんの考察にいつも助けられています。
そして今回も、タゴサク氏の最後の表情が腑に落ちスッキリしました。
ありがとうございます。
>俺ってひょっとしてピエロ? という気持ちの揺らぎが見えたような気がした。
「いつもの二朗さん」本当にその通りです!!!!!!
どんな作品を見ても「何やっても毎回このパターン」って役者さんいますものね…
「二朗さんの力技」この表現とても気に入りました♪
フォローさせてくださいね
よろしくお願いします
こんばんは。
私も夏川さん明日香にはびっくりさせられました。
あいつまぢで酷すぎる!
ラストの供述を聞いて声出ましたもん。
タゴちゃん(ギフテッド?)の周りは不幸にも結局あんな奴らばっかりだったのでしょうね。
原作は続編あり、こちらも面白いそうです。
映画も続編期待しちゃいます!
かばこ様 たくさんの共感とコメントをありがとうございます
佐藤二朗さんのスズキタゴサクが恐ろしかったです
最後の音声が気になりましたが、確かに続きを思わせる感じでもありましたね
続編があれば楽しみです
共感ありがとうございます。
今回は引き分け、ってのは大分類家に花を持たせた感がありましたね。たった1匹の毒虫の自分に対して、組織で向かって来る警察への彼なりの敬意だったのかもしれません。
共感ありがとうございました。明日香のタゴサクへの仕打ちは酷いですよね。ホームレス時に何かと気にかけてもらったのだろうに、内心タゴサクを見下していたんでしょうね。息子の事で助けを求めるなんて厚かましい。警察官の妻としてのプライドも生活も壊された怒りもあったでしょうが、タゴサクに一杯食わされた後は、結局シラを切るってすごい根性。娘を守りたい気持ちもあるんでしょうけど。
自分とか余韻のあるような作品だったら次の作品に頭を切り替えられない場合があるから 2本観ようとする場合は2本目はチケットを事前に取らずに大丈夫そうだったら2本目にトライするって手口でやってますよ👻
共感ありがとうございます!
警察の不祥事と残りの爆弾の部分が消化不良ですが、原作に連動して続編の製作がほぼ決まっているようです。観客の熱量が冷めないうちに続編を作って、気持ちの良い「答え合わせ」が出来たら最高の作品になりますね。
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