「原作は読まなくても大丈夫。噛み砕いて分かりやすく全て映像化されているから。」爆弾 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
原作は読まなくても大丈夫。噛み砕いて分かりやすく全て映像化されているから。
原作は二度読んだ。単行本が刊行されてすぐと、映画化後に文庫本で。「このミス」国内1位はダテではなくもちろん面白いのだけど、それなりに瑕疵もあるなと思った。
映画では出てこない細野ゆかりという登場人物がいる。原作はこの人物への記述から始まり、この人物の記述で終わっている。他の登場人物とは全く関係しない。一箇所だけ彼女の行動が全体の筋に影響をもたらすキーポイントがあるがそこ以外はほぼ筋にも関係しない。傍観者なのである。細野ゆかりは、情報が瞬時に入手でき瞬時に拡散されるこの社会を代表している。自分の姿が他者に視える場所では意見は表明せず、匿名の誰かとしてしか世界と積極的に関わらないようにしている。細野ゆかりはあなたでありわたしでもあるわけで、それが原作のいわば裏テーマである。だから、この「爆弾」という作品は細野ゆかりが傍観者として抱えた世界の中にすっぽり収まっているというメタ構造になっているのである。
残念ながらこの作者が仕掛けた構造はほとんど読者には伝わっていない。それはひとえに筆力のなさに起因するのだが、いささか登場人物が多すぎてブロットが複雑すぎるところにも由来する。筋に目を奪われ、強引すぎる展開に気を取られているうちに、せっかくの構造的な仕掛けは印象薄くなってしまった。直木賞が取れなかったわけである。
さて、映画の話である。先ほど原作の強引すぎる展開、と書いたが、その最たるものは、むやみに動き回る倖田沙良という警官だろう。交番勤務の制服巡査でありながら広域の捜査に参加するという無理筋の設定でしかも直情径行の性格から事件に様々な波風を立てる。原作は彼女に紙幅を割きすぎてバランスが悪くなった。映画では伊藤沙莉がやや抑え気味の演技で全体の筋運びを壊していない。先ほど書いた細野ゆかりが登場しないところを除き(彼女の大学の金髪の先輩は何箇所も出ているが)それ以外の主要な筋は原作通り。でも原作の過剰なところ、回りくどいところはキレイに整理された上で再現されている。
撮影や空間表現はいかにもテレビドラマ的だけど「ラストマイル」とかと比べればはるかにマシ。
これで十分です。原作を読む必要はない。原作者には続編を期待するけど。
あんちゃんさま
共感ありがとうございます🙂
「ひとりごと」みたいな長文コメントを失礼いたします。
映画や原作の内容にも、佐藤二朗さんにも一言も触れていない、スピンオフみたいなレビューを投稿してしまいました。
映画.comにレビューを書き始めてちょうど1年なんですけど、『爆弾』って良くも悪くも「フジテレビ」が作った映画だなぁと思ったら、レビューを書く気持ちが折れてしまいました。
TV局のプロデューサーがA4ペラ1枚の企画書を上げて、企画が通ったら原作権と俳優のスケジュールを押さえて、脚本と主題歌を依頼して、脚本が出来たら監督に話を振って、動員を狙った追加キャストを発表して、宣伝はTVスポットを大量投下して…
『爆弾』の永井聡監督も、『秒速5センチメートル』の奥山由之監督も、「自分に依頼が来た時は、完成台本も主題歌も決まっていた」と、同じことを話していました。
岡田翔太プロデューサーは、映画の初日の劇場動員で続編制作を決定すると話していましたが、『爆弾』は原作の続編『法定占拠 爆弾2』があるので、映画も続編ありきに見えました。
復帰しない宣言していた織田裕二さんの青島刑事が復活する、映画『躍る大捜査線』の撮影も始まってしまいました。
今年は『国宝』『鬼滅の刃』『宝島』『愚か者の身分』と、TV局が製作委員会に入らない邦画が頑張っていたのに、流れに逆行するみたいで何だかなぁでした🫡
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