「現代社会の、人間そのものの闇と倫理観のゆらぎを露わにするようなやり取りにしびれる」爆弾 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
現代社会の、人間そのものの闇と倫理観のゆらぎを露わにするようなやり取りにしびれる
酒屋の自販機を壊し、店員を殴ったということで野方署に連行された自称スズキタゴサクは霊感が働くと言って爆破事件の時間と場所を的中させ、さらに3回爆破が起こると言ったことで警察内は大騒ぎに。のらりくらりと意味不明なことを話しながらクイズを出題しているように見えてそこにヒントが隠されていると見抜いた捜査官の類家との間で会話による知的な格闘が始まる……。
こんな会話劇が繰り広げられるとはまったく期待せずに劇場に足を運んだのだが、あたかも『羊たちの沈黙』におけるレクター博士とクラリスの対話に匹敵するような(あるいはそれ以上の)ヒリヒリするような、現代社会の、そして人間そのものが持つ闇と倫理観のゆらぎを露わにするようなやり取りが展開される。
染谷将太、伊藤沙莉、渡部篤郎、坂東龍汰、寛一郎など役者陣がとにかく豪華だが、特に、類家が尋問を行う様子が2020年のNHKドラマ『ここは今から倫理です。』を彷彿とさせつつ、さらにアグレッシブな山田裕貴の演技が素晴らしいし、観客にとにかく嫌悪感を抱かせなくてはならないスズキタゴサク役の佐藤二朗はそれ以上の適役はいないと言えるだろう。
少し前のイギリス作品『ブラックバッグ』 での会話劇にも痺れたが、邦画でもここまでできるとは!取調室の中だけの舞台にしても十分成り立ちそうな脚本にできそう。まぁ、呉勝浩による原作が良かったのかも知れないが……。
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