「この“爆弾(スズキタゴサク)”に耐えられるか…!?」爆弾 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
この“爆弾(スズキタゴサク)”に耐えられるか…!?
都内のあちこちに爆弾が仕掛けられ…という、一見よくある爆弾テロ・サスペンスに思えるが、劇中の怪人物のように見る者を翻弄させるトリッキーな展開。
こういう話の場合、爆弾は何処に?…もさることながら、犯人は…?
犯人らしき人物はすでに身柄を連行されている。酔っ払って自販機を壊し、店員に暴行した別件で。
住所不明。スマホや身元を特定するものも持っていない。記憶も曖昧。メタボ体型に頭に10円ハゲ。“スズキタゴサク”とだけ名乗る中年男。
腰は低く、人懐っこい感じもあるが、得体の知れない雰囲気も。寧ろ、そっちの方が大きい。
刑事の聴取にものらりくらり。そんな時、おかしな事を言い出したのだ。
私、霊感を持ってるんです。その霊感で分かるんです。秋葉原で何か起きるって。
戯言と思っていたら、秋葉原で爆発事件。
この男が爆弾を仕掛けた…?
本人は否定。あくまで霊感。
再び霊感が働く。これから一時間毎に後3度、爆発が起こるという。
仕掛けられた場所のヒントを、謎めいたクイズで提示。
本当にこの男が犯人ではないのか…?
クイズも意味不明。一体、何を言ってるんだ…? しかし…。
そもそもこの男は何者なのだ…?
爆弾が仕掛けられた場所は…?
迫るタイムリミット。刑事たちはこの“スズキタゴサク”という男の手のひらで踊らされ、焦り、翻弄させられ…。
取調室で行われる刑事たちとスズキタゴサクの行き詰まるやり取り。
スズキタゴサクの話はこちらを煙に巻く。クイズも難問。おちょくっているのか…?
しかしその話やクイズを深掘りすると、意味を成していく。
それらを繋げ、その先に、爆弾が仕掛けられた場所の答えが…!
それに気付いた頭脳派の刑事・類家。
が、都内のあちこちで爆発が続く。
スズキタゴサクに言い様に翻弄させられ、他の刑事たちはKO。一人は命の選択をしてしまい、一人は機密情報を外部の知人に漏らしてしまった結果…。
爆発も止められず、成す術は無いのか…?
類家が聴取を担当する。頭はキレるが、この怪人物に対し一切の容赦ナシ。
化け物vs異端児!
支離滅裂、全く無関係のようなスズキタゴサクの話の中に、ある不祥事を起こし自殺した刑事の名、自身の過去も。
背景に思っている以上に大きな何かがある。
類家は少しずつ核心に迫っていくが、スズキタゴサクは3度の爆発以外の爆弾が仕掛けられている“2回戦”を予告する…。
取調室の攻防のワン・シチュエーションだけではなく、爆弾を見つけようと現場も奔走。丁々発止の男女巡査コンビの奮闘。思わぬ危険が…。(外部の知人はこの巡査コンビ)
取調室での緊迫感。本当に一挙一動に引き込まれる。
現場では動きあるスリル。爆発の臨場感、惨状、クライマックスの連続爆発のスケール…。
静と動のメリハリあるサスペンスが相乗効果となって盛り上げる。
ヒューマンドラマやコメディやラブストーリーやサイコ・スリラーなどで充実作を手堅く見せてきた永井聡監督。そのキャリアをまた一段と飛躍させたと言えよう。
最初にスズキタゴサクと対した染谷将太、スズキタゴサクにKOさせられてしまった渡部篤郎や寛一郎、現場で動き回る伊藤沙莉&坂東龍汰…。皆、熱演。
最初はただの変わり者若刑事かなと思った山田裕貴だが、頭のキレと鋭さで堂々と対し、実力を見せ付ける。
そのアンサンブル、話の面白さ、一級のスリル…。これらをまとめてのし上げたのは、言うまでもなく佐藤二朗。
佐藤二朗が(また映画comに消されるかもしれないけど)某バカ監督のおふざけ役者だけではないのは周知の事実。『さがす』『あんのこと』などでの本来の実力。
本作で魅せた惚けたユーモア、人を食った言動、初見物腰柔らかそうからの不気味さ、凄み…。
長台詞は圧巻。
社会の底辺者、虐げられる者の怨み辛み。
あの動画の声明にはゾッとする…。コンプライアンスが厳しいこのご時世、よく台詞にした。
これまでやってきたコミカルとシリアスの全てを併せ持った、佐藤二朗のキャリアの集大成と言って過言ナシ!
本作を見たかった理由の一つに、“佐藤二朗の演技がヤバい…!”との声々々だったのだが、その期待に違わぬと言うか、超えてきた。
本当にその怪演に震えた。ゾクゾクした。興奮した。打ちのめされた。
日本映画界に新たな化け物爆誕!
今年の助演男優賞は『国宝』の横浜流星で決まり!…と思っていたのだが、流星クンピンチ! インパクトは主役級。となると、吉沢亮もピンチ!
『さがす』『あんのこと』『爆弾』と類い希な才能と実力を魅せてくれた佐藤二朗。今後これらを超える作品や演技は…? いや、佐藤二朗ならまだまだ魅せてくれるだろう。
一見何の関わりも無いと思っていた自殺した刑事の不祥事やスズキタゴサクの身の上話。
これらが超重要…!
あまり言うとネタバレになってしまう恐れがあるので、嗚呼、言えないこのもどかしさ!
各ピースが繋がっていき、徐々に、そして遂に真相が明らかになる展開は、ミステリー好きには堪らない醍醐味!
なかなかに入り込み、見終わった後かなりドッと疲れるが、“このミステリーが凄い!”1位も納得の、邦画久々のKO級のサスペンス/ミステリー!
ラストも戦慄。爆弾はまだ何処かに…。あなたの身近の○○○の中かも…?
今年も後2ヶ月となり、年間MY BESTも形が出来てきた。
まだめぼしい期待作はあるが、そうそうBESTは崩れないと思っていたら、思わぬ伏兵登場!
隣町まで足を伸ばした甲斐があった。
まさに、“爆弾”級!
共感ありがとうございます!
この作品の中で詳しく語られていない部分に、警察の不祥事と残りの爆弾の有無がありますが、原作に続編があるらしくてそこで明らかにされるとスッキリできますよね。記憶が鮮明なうちに続編の封切りに期待大です。
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