劇場公開日 2025年10月31日

「サイコ・サスペンスは犯人役が作品の命運を握る」爆弾 えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 サイコ・サスペンスは犯人役が作品の命運を握る

2025年11月2日
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鑑賞方法:映画館

興奮

知的

物語の幕開けは、酔った勢いで自販機と店員に暴行を働き、警察に連行された一人の謎の中年男。彼は自らを「スズキタゴサク」と名乗り、霊感が働くと称して都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告!秋葉原での爆破を皮切りに、この後一時間おきに3回爆発すると予知していく。そして、刑事たちの問いかけをのらりくらりとかわしつつ、次第に爆弾に関する謎めいた“クイズ”を出し始めるのだった・・・。彼は、いったい何者なのか!?そして仕掛けられた“爆弾”の正体とは!?(109シネマズサイトより)。

驚異的な知性で捜査陣を攪乱、翻弄するサイコ・サスペンス作品にはいくつかの類型がある。「羊たちの沈黙」のアンソニー・ホプキンスや「死刑に至る病」の阿部サダヲ、「セブン」のケヴィン・スペイシーは、わたしたちと同じことばを喋ってはいるが、果たしてコミュニケーションは図れているのだろうか、すり合わせ可能な価値観を持っているのだろうか、といった犯人役の腹の見えなさ、闇の深さが見せ場の作品であるし、「容疑者Xの献身」の堤真一やちょっと位置づけは異なるが「ジョーカー」のホアキン・フェニックスのように、犯行そのものに断罪しきれない理があったり、何か目的を達成するために、知性そのものを手段とする知能犯もいる。

いずれのケースにせよ、犯人役がまずは作品の命運の握るわけだが、その意味で、福田組作品等でコミカルな役回りの多い、というかもはやほぼコメディアンと言っていい佐藤二朗は絶妙なキャスティングであり、本作では腹の見えなさとある種の理を併存させる見事な演技を披露した。

また、こうした作品には、攪乱される捜査陣にも必要な配役があり、本作では山田裕貴が犯人の知性と対等に渡り合う天才役を好演しているが、何より良かったのは逮捕に至りそうで至れないかつて天才刑事だったであろう渡部篤郎である。潔癖で正義感にあふれ忍耐強く、組織にも忠実でありながら、最後の最後で根負けしてしまう様が非常に良かった。翻弄されまくる寛一郎も、カビの生えたような刑事哲学で全く捜査に貢献しない正名も良かった。娯楽エンタテインメントとして楽しめる作品。ちなみにエンディングテーマがめちゃくちゃ良いので最後までぜひ。

えすけん
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