「原作を読んだ方でも楽しめると思います」爆弾 コレッキャ・ナイデスさんの映画レビュー(感想・評価)
原作を読んだ方でも楽しめると思います
※原作のネタバレを含みます。
映画化として非常にうまく纏められていると感じました。
大学生のエピソードや鶴久課長の娘などのサイドストーリーがカットされ、スズキの冗長な独白も最小限に。原作で好きだった「警察の勝利とは、犯人をルールの内側に引き戻すこと」といった清宮の台詞も省かれているのは残念でしたが、スズキの事件にフォーカスした濃密な実写化 になっています。
映画の構成として、「取調室の張り詰めた尋問」「外で進む爆弾捜査とタイムリミットの緊張感」を交互に見せていくスタイルとなっています。
スズキ・清宮・類家による取調室のやりとりは緊迫感があり、特に会話の応酬は見応えがありました。ただ、舞台が一室に固定されるため画面のバリエーションには限界があり、カメラワークで工夫をしているものの、映像的にはやや単調 に感じる部分も。音楽もメリハリが効いているのですが、一方で静かなシーンが多く、劇場では寝息が聞こえる瞬間もありました…。
閉鎖空間の心理戦が好きな方には刺さると思います。
爆発シーンは迫力がありましたが、引きの画が多いのが気になりました。3回戦の爆破では被害者が100人超という規模なので、瓦礫や負傷者の描写をもう少し寄りで見たかった所です(センシティブな表現になるため、あえて避けたのかもしれません)。
※ここから原作終盤に関する言及あり
明日香が警察署に入ってからの展開は、少し急ぎ足で収束してしまった印象です。(ここも正面から入ってくるので違和感がありますね)
特に惜しかったのは以下のシーンが削られていたこと:
・等々力と対立している課長が「明日香が殺人に関わっている」という等々力の判断を受け入れる場面
・明日香侵入後、等々力が後輩を押し留め、一人で爆弾(明日香)を探しに向かう覚悟のシーン(最終的には二人で向かうのですが)
・倖田が明日香を命懸けで説得するシーン(シーン自体はあるのですが、短すぎて重みが薄い印象です)
スズキが「もういいや」と全てを巻き込んだ爆弾事件を肯定した一方で、刑事たちはほんの少し見知った程度の関係でも、命を懸けて人を救おうとするという感情の対比が上記のシーンを通して描かれます。そのアンチテーゼが弱まってしまったのが残念でした。
2時間超の映画なので尺に余裕が無いのは理解していますが、現場にいる刑事たちが、行動でスズキに抗うシーンが残っていれば、ラストの感動がさらに強くなったと思います。
終盤に気になる点はあるものの、全体として満足度の高い実写化 でした。
原作既読者でもしっかり楽しめると思います。
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