「前半はなぞなぞバトル、後半は喪黒福造合戦」爆弾 おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)
前半はなぞなぞバトル、後半は喪黒福造合戦
予告を観た時は、その興味深いシチュエーションに強く惹かれた。
日本映画は、観客の興味を引くような状況設定、いわゆる「掴み」を作るのが上手いと感じる。
ただ、多くの日本映画に共通して感じるのは、話が進むにつれて物語の粗が目立ち始めること。
原因としては、まず魅力的なシチュエーションを考え、後付けで「なぜそうなったか」という理由を構築しているからではないかと思う。
そのため、リアリティよりも物語の都合が優先されがち。
その結果、特に日本映画では、後半になるにつれて「そんなわけあるか」と白けてしまうことが多くなる印象。
この作品を観ていて、まさにそんなことを考えてしまった。
話が進むにつれて真相が判明していくわけだが、これに関わった人々の行動が不可解に感じることが多かった。
「あの状況で、そんな行動は取らないだろう」と思うことが多く、納得できず頭が爆発しそうになった。
爆弾犯の思う壺なのかもしれない。
佐藤二朗演じるスズキタゴサクの犯行動機が明かされる場面を観ていて、東野圭吾の小説『容疑者Xの献身』を連想した。
『容疑者Xの献身』は、犯行に及んだ男の動機が丁寧に描かれていて共感できる部分もあったのに対し、『爆弾』の映画版だけ観ているとそのような内面はあまり描かれていない。
そのため、登場人物たちが物語の辻褄を合わせるために都合よく動いているようにしか思えなかった。
スズキタゴサクは『バットマン』のジョーカーのようなサイコパスな犯罪者として描きたかったのだと推測する。
しかし、ああいうキャラは、こちらがハッとさせられるような深層心理を突いた鋭い言葉を投げかけるものだが、スズキタゴサクは人をからかうような言い方で、どこかで聞いたことがあるようなありきたりな鬱陶しい発言をしてくるだけ。
そのせいで、だんだん会話劇が退屈になってしまった。
繰り広げられる会話劇は知的な会話風なだけでたいして中身がなく、雰囲気だけに感じられてきて飽きてくる。
さらに、後半になるにつれて説教くささが増してくるので、観ていてイライラしてしまった。
前半は、スズキタゴサクが仕掛けた爆弾の場所に関するクイズを出してきて、警察が対応していく展開。
このクイズが驚くほど普通のなぞなぞだったことに、逆に衝撃を受けた。
なぞなぞとしては問題が分かりにくく興味が持てず、答えを聞いても「あ、そうですか」といった感じに終わる。
山田裕貴演じる類家がエリート刑事として登場するが、普通の刑事ドラマであれば「誰が犯人なのか」とか「犯人はどうやって犯行に及んだのか」で頭を悩ませるものだと思う。
それなのに、他の大量の警察関係者が事件対応でてんやわんやしている中、類家だけが一人でなぞなぞの答えを必死に考えている姿はなかなか斬新だった。
後半は類家とスズキタゴサクの一対一の取り調べの場面になっていく。
最初は知的な会話のバトルが繰り広げられるものと期待したが、実際はお互いに「あなたの本性はこうだ!!」みたいなことを決めつけで言いあうだけに感じた。
だんだん二人が『笑ゥせぇるすまん』の喪黒福造に見えてきた。
論理的に言っているわけではなく単なる決めつけで言い合っているだけなので、まるで幼稚な人間の言い争いを見せられている気分になった。
事件の発端となる警察の不祥事も理解に苦しむものであった。
あんなことで、不倫芸能人並みに記者が追い回すほどマスコミは暇ではないと思う。
警察の不祥事なら、痴漢、盗撮、パワハラ、横領、不当な取り調べ、情報漏洩、事件もみ消し、証拠捏造などなど、いくらでも世間を騒がせた事例があるのに、なぜあえてそんなことを事件の発端にしたのか、本気で意味不明だった。
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