「やっぱりジロー ここでもジロー」爆弾 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
やっぱりジロー ここでもジロー
『スズキタゴサク』役を演じた『佐藤二朗』がサイコーだ。
彼無くして本作は成立せずと断じても過言ではない。
個人的には
『佐藤二朗』とエキセントリックさは強く結びついている、
とりわけドラマや映画では。
毎週「NHK」の〔歴史探偵〕で見ているのだが、
突如としてこのような狂気に囚われた態度に豹変するのでは、と
気が気がではないのは自分だけか(笑)。
もっともご当人、直近で流行りの学歴詐称でなければ、
信州大学卒業ののちリクルートに入社しているので、
エリートに近い路を歩んではいるのだが。
器物損壊と暴行で逮捕された『スズキ』が、
「自分には霊感があり、このあと直ぐに都内で爆発が起きる」と予言する。
その言葉通り起きた事件に警察は色めき立ち、
当初は所轄の『等々力(染谷将太)』が取り調べに当たり、
本庁から派遣された『類家(山田裕貴)』が後を引き継ぐ。
大柄な体躯と、ぬーぼーとした風貌に騙されそうになるが
『スズキ』の頭脳は明晰。
口八丁で、他人の心をいとも簡単に操る手管も持つ。
次々と起こる爆発を警察は止められない。
虚実ない交ぜの供述に、都合が悪くなれば「記憶を失くした」と嘯く『スズキ』。
スキにつけ込み、爆弾の在りかを聞き出そうとする怜悧な『類家』との
丁々発止の心理戦が始まる。
互いに挑発し、プライドを傷つける言葉の応酬。
比喩や暗喩を駆使した示唆の謎解き。
わくわく、ぞくぞくする、素晴らしい流れ。
そのやり取りの中では、
〔運命のボタン(2009年)〕でも言及された「利他」の命題や、
強い自己肯定感が人を見下す人間の普遍的な業、
或いは「トロッコ問題」の応用編などが俎上に乗り、
鑑賞者を含め煙に巻かれる。
140尺の半分以上は、閉ざされた取調室でのシーン。
当然のことながら顔のアップが多くなり緊張感も高まる。
仏頂面の『スズキ』と黙考する『類家』の対比。
そこに突如として乱入する婦警『倖田(伊藤沙莉)』の
激情に駆られた表情が人間らしさを醸し
却って安堵する「破」の効果。
素晴らしい演出。
中途、功を焦る警官が単独先行に近い行動を取るが、
これにも前段で説明が用意され、
ありがちな「間抜けな警察ありきで事件が混迷する」凡作とは
一線を画す造り。
次第に見えて来る結末は、
思いもよらぬ動機に驚愕し、
『スズキ』の行動には痛々しさも感じる。
世間への復讐と、他者への献身が混交し、
なんとも後味の悪い幕切れだ。
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