「ずーっと佐藤二朗、最後に染谷将太の映画」爆弾 kab_mtrさんの映画レビュー(感想・評価)
ずーっと佐藤二朗、最後に染谷将太の映画
原作は未読。終始、佐藤二朗、最後に染谷将太が締める映画でした。
佐藤二朗さん演じるスズキタゴサクと山田裕貴くん演じる類家の対話では、二人が合わせ鏡のように見えます。それぞれがそれぞれに社会に対して厭世的。
でも最後の最後、本当にスズキと合わせ鏡なのは染谷将太さん演じる等々力のほうなんだと思いました。
類家は明日香が最初からスズキを利用するつもりはなかったのではないかと話します。それはそうかもしれない。でも(その時点ではスズキも類家も知らないけれど)、実際のところ明日香は罪を認めない。娘もいるからさもありなん。類家の捉え方はまだロマンチストなんですよね。それにスズキは答えない。
それに対して、取り調べ室を出た後、等々力と対面したスズキの言葉に等々力が「でもなスズキ、俺はそれを不幸せだとは思わないよ」(とかなんとか)と答えたときは、「なるほどです」(だったか)と発話します。等々力は類家よりも社会への厭世が深く、でもそれを受け入れている。彼のほうがスズキに近く、その上で違う選択肢を取った、それがスズキに響いたのだと捉えました。
この作品は観客に結構なもやもやを残す作りです。
満を持してスズキに対面する類家は、挑発的な言葉で言うほどスズキに迫れていない。
爆発は防げないし、最後の爆弾も見つからない。動画でスズキが言ったように爆発は10年後かもしれない。動機だってスズキ自身の言葉では語られない。
類家はああ言ったけれど、明日香はすべてをスズキに被せて逃げ切ろうとする(例えば、犯人が自らの小さな救いとなった誰かをかばうという点で共通項のある「容疑者Xの献身」のようなカタルシスがない)。ついでに言うと長谷部もえん罪とかじゃない。
何も解決していないし、報われないし、わからないままです。結末がもやもやとフェードアウトしそうなところ、あの等々力のセリフで締まったと思いました。あれをこざっぱり決められる染谷将太、素晴らしい。山田くんも頑張ってたけども、染谷が持ってった。あれがあるからあの役は彼なのだと思うほど。
あと良かったのは渡部篤郎、坂東龍汰。
渡部篤郎さんは自分の力不足を突きつけられたところで部下の能力を認めて任せられる、部下を肯定して類家の代わりに即座に「悪人だ」と断言できる、すごくいい上司で、一組織人として「あんな上司ほしい」と思いました。
坂東龍汰さんは、上手ですね。なんてことないシーンをあんなに自然にできるの、本当に力のある俳優さんだと思いました。ついでに言うと彼の演じる「きのう何食べた?」のタブチくんも大好きです。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
