「取調室の攻防戦と犯人のレクター博士っぷりに注目」爆弾 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
取調室の攻防戦と犯人のレクター博士っぷりに注目
大々的な宣伝が奏功したのか、公開初日8割方の入りでした。楽しみにしていた作品でしたが、佐藤二朗が犯人役ということで、大きなる期待と不安が混在する中での鑑賞となりました。結果としては、二朗さんの良い部分が引き出されており、中々面白い作品でした。
お話は、爆弾魔であるスズキタゴサク(佐藤二朗)と警察の取調官の対決を描いたもので、序盤は所轄署の刑事である等々力(染谷将太)が、中盤以降は本庁の清宮(渡部篤郎)、そして主役の類家(山田裕貴)がタゴサクに相対することになりましたが、難攻不落のタゴサクを落とすのは至難の業でした。見所は、タゴサクの動機は何かということと、タゴサクに相対した刑事が、続々とタゴサクに操られてしまうところ。特に相手の急所を突いて精神を破壊していくタゴサクのやり口は、レクター博士を彷彿とさせるもので、二朗さんの演技の凄みを存分に味わうことが出来ました。
一方でちょっと首を傾げざるを得ない部分も。伊藤沙莉扮する倖田巡査と坂東龍汰扮する矢吹巡査が、2回に渡り警察官としての規律を無視した行動を取り、1回目こそ結果オーライで新聞配達員の命を救ったものの、2回目は矢吹が爆弾を踏んでしまって足を失う羽目に。間接的にタゴサクに操られていた感はあったものの、著しくリアリティを欠いているように思えました。
また、既に東京各地で爆弾が爆発し、実際に被害者が出ている状況になっていて、阿佐ヶ谷駅にも仕掛けられている可能性があるということで駅を立ち入り禁止にしているにも関わらず、改札に客が多数押し寄せていたのは、流石にあり得ないでしょう。
この辺りの筋立ては、ちょっと白ける設定でマイナス要素でした。
ただ俳優陣は概ね良く、特に佐藤二朗はじめ、最近大活躍の山田裕貴、染谷将太、渡部篤郎、寛一郎といった取調室にいた方々の攻防戦は見応えがありました。野方署の課長(だったかな)の鶴久を演じた正名僕蔵も、小者感が良く出ていて流石でした。唯一倖田巡査役の伊藤沙莉だけが、あんまり警察官ぽくなかったかなと感じました。まあ彼女に無謀な行動を取らせるシナリオに問題があるような気もしますが。
そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。
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