「2億点の佐藤二朗を味わう」爆弾 野菜のおじさんさんの映画レビュー(感想・評価)
2億点の佐藤二朗を味わう
これは……これは凄い(語彙力)。
所謂"いつもの佐藤二朗"のテイストを確かに残しつつも
そこに不気味さ、不快さ、下品さ、プライドの高さ、何者かになろうとしているだけの卑屈さ、ただの個人的な怒りと愉悦、
あらゆる要素が確かな重みを持って過不足なくブレンドされたスズキタゴサクという人格。
3人の刑事の取り調べを経て、これらの要素が多層の皮を剥いていくように露わになる過程。
取調室や警察署という狭い空間の中で延々とヒリつく駆け引きが続く様には一瞬の中弛みすら無かったと思う。
他のキャスト、特に染谷将太・山田裕貴・渡部篤郎の熱演も十分素晴らしいものだったと思えるがその上であえて言える。
『この佐藤二朗を観る為だけに劇場に行く価値がある』と。
【追記・考察】
そこそこ話題になっているスズキタゴサクの素性について。
もちろん確証を持てる描写はないけど
取調べの担当が代わる度、対話が進む度に少しずつタゴサクの態度が変化しているのは分かる。
九つの尾の問答の辺りから少しずつマウントを取りにいくような文言が増え、同時に(言い方は悪いが)「ありがちな底辺層の理屈」を主張し始める。
類家が担当になってからが露骨で、状況は有利なはずなのに明らかに余裕のない煽りを繰り返すようになる。婦警の乱入が無ければあそこでもう話は終わっていたかもしれない。
月並みな結論だけど類家に対するほとんどの言葉がブーメランなんだろうな、と。
同族(タゴサクが勝手にそう思っただけかもしれないが)嫌悪というか、タゴサク自身が「周りは皆バカだと思いながら生きてきた人間」っていう。
元々それなりに頭は回るがそれ以上のプライドを持っていて、そこから路上生活者にまで身を落とす経緯も「ありがちな話」におさまる程度のもの。
石川に対するややこしい感情の向け方からして
学生時代の話にはいくらか真実が混ざっていそうな感じもする。
……ここまで書いておいてアレだけどこの作品、というかタゴサクを「日本のジョーカー」みたいに表現する人らには怒られそうな考察である。
ヒースとホアキンぐらいの違いだしまあええやろ。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。

