「評価の難しい作品」A LEGEND 伝説 バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
評価の難しい作品
『THE MYTH 神話』『カンフー・ヨガ』の姉妹編で、輪廻転生を題材にして現在と紀元前の前漢の時代を舞台とした合戦&アクション映画。
この映画、実はあんまり期待してなかった。本国じゃ大コケしたそうだし、特にAIで作った若い頃のジャッキーの顔を他人の体(というか顔面以外)にハメ込んだAIジャッキーが大不評という噂が流れていたからだ。実際に観てみたらやはりAIジャッキーがどうにも不自然。いま問題になってるDeep Fakeそのもので、出てくる度にすごい違和感。前漢パートは全てAIジャッキーで、しかも前漢パートが予想以上に多く、というか多すぎて実に半分以上の6割~7割ぐらいが前漢パートなのだ(前2作では古代パートもありつつ、あくまで現在パートが主だったんだが)。なので当然AIジャッキーの出番が本物のジャッキーよりもむしろ多く、AIジャッキーが出てくる度に、なんだこれ?何見せられてるんだ?感がぬぐえない(思えば予告編ではAIジャッキーを巧妙にカットしてあった)。正直、前漢パートになる度に、早く現在パートに戻らねえかなと思ってしまった。
じゃあ、つまらなくて退屈したのかというとそういうわけでもなく、AIジャッキーを抜きにして単純に娯楽アクション映画として観ると結構面白かったのも事実だ。前漢パートはとにかくものすごいスケールで、どんだけ馬がいるんだってくらいの大騎馬戦が展開される。CGも含まれてるんだろうけどこっちの技術は高いのかそうは見えないな~と思ったら、なんと実際に1万頭以上の馬と1300人以上の遊牧民が動員され、半年間訓練したそうだ(ただし馬がコケるシーンとかは明らかにCGだった)。ヒロイン役のグーリーナーザーも走る馬の上に立って弓矢を射るという離れ業アクションを見せてくれるが、撮影前は馬に乗れないどころか恐怖心を抱いていたというからすごい。ロケ地の雄大な自然風景も素晴らしく美しい。ただ、その中心にいるのがAIジャッキーだからなあ。グーリーナーザーは結局本物のジャッキーと映画の中で1度も共演しなかったわけで、なんか観ててモヤモヤした気持ちになってしまう。
一方の現在パートはいつものジャッキーといった感じで、やっぱりこっちのほうが落ち着いて観ていられる。アクションは昔に比べて遥かに小ぶりだしスタントやワイヤーも使ってるだろうが、70歳超えたジャッキーが昔ながらのアクションをしてくれるだけで楽しい。若い助手役のチャン・イーシン(レイ)がコメディパートで笑わせてくれるし、もう1人の助手役を演じる女優ポン・シャオランの往年のマギー・チャン的なキャピキャピ女子も可愛い。個人的には前漢パートのウイグル美女グーリーナーザーより彼女のほうが好み。しかしまあ中国にはいくらでも美人女優がいるもんですな。
全体的には面白いことは面白いんだが、問題はその中心にいるのがAIジャッキーだということで、評価が難しい作品である。まあ、でも面白いことは面白かった。