「君が幸せそうに笑うと、僕も幸せな気持ちで満たされていく」ラブ・イン・ザ・ビッグシティ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
君が幸せそうに笑うと、僕も幸せな気持ちで満たされていく
2025.6.18 字幕 イオンシネマ四條畷
2024年の韓国映画(118分、G)
ソウルに住む「少し違った若者」たちの半生を紐解くヒューマンドラマ
原作はパク・ヨンサンのオムニバス短編集『대도시의 사랑법(大都会の愛し方)』に所収されている「ジェヒ」
監督はイ・オニ
脚本はキム・ナドゥル
原題は『대도시의 사랑법』、英題は『Love in the Big City』
物語の舞台は、韓国のソウル
大学に通っているチャン・フンス(ノ・サンヒョン)は、自らがゲイであることを隠し続け、母・ミョンスク(チャン・ヘジン)にも打ち明けられていなかった
だが、母は何かしらを感じているようで、最近は教会に通ってはお祈りに傾倒していた
ある日のこと、フンスが専攻しているフランス語の授業に、フランス留学していたク・ジェヒ(キム・ゴウン)がやってきた
その後、懇親会でオリヴィエ教授(サリム)に気に入られたジェヒは、男子学生からも注目の的になってしまう
ジェヒは恋愛になると突っ走る性格だったが、それ以外にもワンナイトラブを辞さない性格で、女子学生からは煙たがられていた
ジェヒは誰とでも寝る女として認知され、ゼミのグループチャットであることないことを書かれ始める
だが彼女は噂を一蹴する行動を見せ、その日から「イカれ女」と呼ばれるようになっていた
フンスの方は、ナイトクラブなどに通っては相手を見つけて性欲を満たしてきたが、ある男とキスをしているところをジェヒに見られてしまう
フンスは「弱みを握られた」と感じるものの、ジェヒは「自分らしさのどこが弱みなのか」と彼の考えを一蹴して見せた
物語は、大学にてフンスにゲイ疑惑が掛かり、それをジェヒが助けるところから動き出す
その後も奔放な生活を続けるジェヒだったが、実家に居づらくなったフンスが下着泥棒の件も相まって、転がり込むようにしてルームシェアをすることなった
ジェヒは優等生のマザコンと付き合ったりと色んな色恋沙汰を起こすのだが、フンスの方はスホ(チョン・フイ)との関係をじっくりと深めていく
だが、恋愛をしたくないフンスはスホと向き合うことができないまま、いたずらに時間を重ねてしまうのである
映画は、マイノリティと思われる二人が利害の一致にてルームシェアをする様子が描かれ、少数派を排除しようとする社会の中で懸命に生きていく様子が描かれていく
冒頭は、ウェディングドレスのジェヒとタキシード姿のフンスがビルの屋上で会うシーンになっているが、ここで描かれるタトゥーのネタバラシなども爽快さが伴っていた
若気の至りと言えばそれまでなのだが、それほどに気心が知れた仲ということなのだと思う
なんでも相談できて、そこに性差などは関係なくて、お互いの生活と思想を尊重し合える
自分が欲しいものを相手が持っていて、相手が欲しいものを自分が持っている
そこを突くことでお互いの傷が深まってしまうのだが、分かり合えるからこそ、そこにはふれない優しさがあった
それでも、自分らしく生きるためには避けて通れないことがあって、それが噴出するのが後半の喧嘩になっている
ある種の通過儀礼のようなものだが、それまでに優しさに思えたものが本当の優しさなのかは何とも言えない部分がある
それゆえに、相手が傷つくとしても言わなければならないことがあって、それを言えるのがソウルメイトなんだろうなあ、と思った
いずれにせよ、後半になってフンスの母が『君の名前で僕を呼んで』を観に行くシーンがあって、この行動は「病気だと思っていた息子を理解したいという行動」なのだと思う
自分の理解に及ばないものを怖くて排除しようとするか、理解しようと歩み寄るかという違いがあるのだが、理解に至るまでの個人差というものは避けられないだろう
ジェヒのように元から壁がない人もいれば、フンスの母のように多くの壁が存在している人もいる
そういったものに寛容な社会になれば良いとは思うものの、権利を全面に押し出すような主張はさらに逆効果になっているように思える
社会が変わるというよりは、個人個人の些細な行動が変わっていって、その考え良いよねというふうに拡がっていくのが良いので、声高に叫ぶことで、そういった細かな伝播が封じられてしまうのは勿体無いなあと思った
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