「良くも悪くも「良い子」の作品」不思議の国でアリスと Dive in Wonderland ayaseさんの映画レビュー(感想・評価)
良くも悪くも「良い子」の作品
就活中の主人公が、亡くなった祖母が生前に作ったVRアトラクション?のモニターをするところから物語が始まります。
主人公も「良い子」ですが、この映画自体、良くも悪くも「良い子」の作品でした。
綺麗にまとまってるけど、深みはあまり感じず、鑑賞後の感想は「ああ、よくあるあのパターンね。」っていう感じでした。
アリスの原作もオマージュ作品も好きでしたし、そういう作品もたくさん既に世の中に沢山あるので、私が少し期待をし過ぎてしまったかもしれません。
声優陣は違和感なく、没入できる形です。
アリスの声優に実際の年齢くらいの女の子を当ててましたが、私はその方がアリスの無邪気さが演出されているように感じました。
主人公も「素朴な良い子」なので、プロのアニメ声優を使うよりこっちの方がキャラクターっぽいですね。
不思議の国の住人はキャラが濃いので、人気声優さんも多めでしたが、その方が不思議の国の住人と現実の世界の住人の住み分けって感じでメリハリがありました。
キャスティングとイラストの綺麗さは大変良かったです!
だからこそ、ストーリーが少し凡庸で、起承転結の転も突然変異って感じで少し置いてけぼりになりました。ストーリーのカタルシスのメリハリがあまりなかった気がします。
就活生あるあるというべきか、「みんなと同じことやってるのに」とか「模範解答」とか「人生の近道」を模索している感じが印象的でした。友人たちよりもしっかりはしているし、就活に取り組んではいるが、いかんせん「良い子」であまり自分がない印象です。
それはVR世界も発揮されます。現代社会あるあるで、協調性や中立性を重んじてしまうがばかりに、当たり障りのないことをしてしまって、アリスの原作は知っているというアドバンテージがあるのに、不思議の国での常識や出来事についていけません。
私としてはチェス盤のシーンが印象的でした。あそこで「ああ、これが自分の常識が通用しない世界なのか」と実感しました。
そこまでは良かったのですが、最初から最後までそんな感じだったのが残念でした。
「日本人あるあるの安牌な対応をしてしまう主人公が、ワンダーランドに触発されてどう変わっていくのか」を楽しみにしていたのですが、そこはよくある展開で終わりだったので、この作品自体が「The・日本人」って感じの良い子作品でした。
主人公もアリスと一緒に世界を楽しんだ(現実逃避した)上で、不意に現実を思い出してしまったからついついりんごを食べてしまってジャバウォック化してしまったというクライマックスの方が盛り上がったと思います。
好きなものを伝え合うシーンで、主人公が好きなものがポンポン出てきたのですが、トカゲとゾンビ以外はもう少しそういう描写が日常の中にあって良かったかも。
それこそ、最初の冒頭にあった包み紙の(飴?チョコ?)お菓子を活用して「勉強の合間に食べるお菓子」とかあったら、主人公の表現だけでなく、伏線の回収みたいにも使えたかと。
不思議の国の住人の性格も濃いのは濃いですが、キャラは薄い…というか深掘りがなかったというのが正しいですかね。
青虫やチェス盤に時間をかけてしまって、ハートの女王やお茶会組の深掘りはなかったです。
アリスを知っててもジャバウォックを知らない人も多いと思うので、「伝説の怪物として不思議な国でも恐れられてる」みたいな描写はあっても良かったかも。その方が緊迫感やメリハリが出た気がします。
時間内で終わらせなきゃいけないので、ストーリー構成が大変だったのかもしれませんが、後半部分が少し雑つくて、鑑賞者が置いてけぼりでした。もう少しそれにつながるための伏線や説明になりそうな描写があれば、置いてけぼりにならずにすんだかもしれません。
ペース配分や今あるシーンを有効活用するだけで十分変わり得たなと思うだけに、少し残念ですが…
綺麗にまとまってはいましたし、設定もキャスティングもよく、ストーリー構成以外は気にならず観れたので、個人的には満足です。
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