「テーマではなく、あくまで映画の出来としての評価です。」長崎 閃光の影で しさんの映画レビュー(感想・評価)
テーマではなく、あくまで映画の出来としての評価です。
広島の平和祈念式典での石破総理の挨拶に引用された歌に触発されて、広島と長崎の違いはあるが観ておこうと思った。
映画やドラマ化も数え切れないほどされているが、戦争そして原爆の悲惨さはそれに触れる度に言葉を失ってしまう。
この映画も多分に漏れずそうであった。
トラックに掲げた赤十字の旗が翻るだけで胸に迫るものがあった。また、主人公たちがそれぞれのやり場のない思いや感情をぶつけ合う場面は心に染みた。
さて(ここからはマイナスに感じたことを書くので、ネタバレあり)、観ていて気になったのは脚本、演出、編集(あるいは監修、校閲)の甘さ。
カットのつながりが不自然な箇所が多々あった。例えばバスに間に合わないと先を急ぐカットの次のカットではまだバスに乗る前なのにのんびり歩いて登場し、先を急ぐ風がない。急いだから十分間に合う時間になった?ならその一言がほしい。軍医にコッヘルと言われたのに、看護婦はピンセットを渡し怒鳴られ、2、3カット後、鑷子(せっし)と言われちゃんとピンセットを渡す。それが鑷子とわかっているなら、なぜ先のカットで間違った?疲弊して判断力がなかった?なら軍医の怒り方や、看護婦の演技に疑問が残る。火葬場で我が子と見間違って錯乱する看護師が、いや見間違いだったと判断する契機が不明。例えば1秒でもその子の顔をまじまじと見るカットがあるとか、少年の訝しげな表情のカットがあれば納得できるのに。人物の描き方も雑。婦長だって葛藤があっただろうにただのヤリマンみたいな描き方。
また、スケール感が狭い。予算の都合もあるのだろうが、見えていない部分の広がりが感じられない。テレビドラマくらいのスケール感が残念。
当時の看護婦たちの手記をもとに書かれた脚本らしいが、盛り沢山にしすぎて一つ一つのエピソードが軽々になってしまったのだろうか。
テーマがテーマがだけにもっともっと丁寧に作ってほしかった。