劇場公開日 2025年8月1日

「不安、痛み、勇気、献身。被爆者を救護した彼女らの魂が80年後の私たちに届く」長崎 閃光の影で 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0不安、痛み、勇気、献身。被爆者を救護した彼女らの魂が80年後の私たちに届く

2025年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

少ない予算ながら、高く尊い志が伝わる力作だ。

被爆直後の長崎で救護にあたった女性たちの証言をまとめた「閃光の影で 原爆被爆者救護 赤十字看護婦の手記」を原案とし、やはり長崎の被爆を題材にした劇映画「TOMORROW 明日」(1988年)の製作を担った鍋島壽夫、長崎出身の被爆三世である松本准平が監督と共同脚本、さらに保木本佳子も脚本に参加。看護学生3人の視点で、原子爆弾が投下され爆発した瞬間の衝撃や、直後の状況、次々に運び込まれる重傷者たちの救護に献身する姿を描き出す。

愛国少女的なアツ子(小野花梨)、カトリック信者のミサヲ(川床明日香)、純朴なスミ(菊池日菜子)という具合に、主要キャラクター3人の背景や言動の傾向に差異を出すことで、限られた本編尺の中でさまざまな視点からのエピソードのバリエーションが生まれている。証言のすべての要素を盛り込むことは不可能で、取捨選択は当然ながら、たとえば敗戦後も民間人を見下して威張り散らす軍人に言い返したり、助けを求める朝鮮出身者を拒絶したりといった短い描写に、美談にするのではなくネガティブな面も避けずに語り継ぐ姿勢がうかがえるのもいい。

まだ原爆そのものが一般に知られていない時代、誰も経験したことのない市街の壊滅と膨大な死傷者に直面した彼女たち。恐怖や不安、痛みと喪失を抱えながらも、懸命に勇気を振り絞って救護にあたる姿、その心持ち、魂が80年の時を経て私たち観客に確かに伝わってくる。とくに若い世代に届くといいなと願う。

高森 郁哉
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