うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生のレビュー・感想・評価
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これは長女による復讐劇なのか??
織本さん、カッコよかった。
生涯役者、すごい人生だと感じた。周りの家族に迷惑かけようとも自分のやりたい事を続けるのも一つの才能だと僕は考える。
しかしそういった人生を送るとある種の呪いも受け入れなければいけない。
それが長女によるドキュメンタリー撮影。
織本さんは結婚後に2人の娘を授かったが、訳あって奥さんと娘二人と別居状態になる。そしてその後の25年間は織本さんからの仕送りは無かったそうだ。
そういった経緯があったせいか、この映画からは長女(監督)から父親に対する尊敬の気持ちが感じられないように僕には思えた。
織本さんは死期が近くなった頃、入院先の病床で織本さんは長女がこれまで撮ってきた映像を観ることになる。
その内容は織本さんが奥さんと口論している場面や、番組収録中にNGを出すシーンなど、通常被写体となっている当事者なら余り観たくない映像だ。しかし、織本さんは自分や家族が泣きわめいている映像を観て、「素晴らしいドキュメンタリーだ。こんな凄いのを撮れたのはお前(長女)だからだ」と涙を浮かべながら称賛し長女に伝える。
いったいどういう意図で長女は父親にこの映像を観せたのだろうか。
僕はこれは25年間家族を放置していた父への呪いなのではないのかと思った。
織本さんは奥さんと同居するようになっても、面倒を見てくれている家族に対して面倒かけっぱなしで感謝の気持ちもろくに伝えなかった。
そんな織本さんが病床で自分の娘が撮影した映像を観たとき、これまで好き勝手に役者人生を送ったその代償として生まれた呪いに気づいた。そしてそれを受け入れた。
だから最後に長女に父親としての優しさで「素晴らしいドキュメンタリーだ」と伝えたのだと思う。
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