「地味であり赤裸々でありました。」うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生 ももさんの映画レビュー(感想・評価)
地味であり赤裸々でありました。
名脇役「織本順吉」の最後の4年間を映像作家の実娘が撮り続けた作品。
実の娘という事がなおさら赤裸々な姿をとらえることが出来たのかもしれない。
私の知っている映像の中の「織本順吉」は少し神経質そうな真摯なお爺さまで、柔和な笑顔や決して出しゃばらないけれども存在感のある俳優。
そして、娘が撮り続けた職業俳優の実父はどこにでもいる老人かつ、頑固な老人。
現場と家では年齢が10歳ほど違うのではないかと思うほど。
あまりの勝手さが可笑しくて笑えてくる場面もありましたが、家族は本当にわらえない(笑)
俳優と言う職業が彼の中で彼の人格を作り、次々と現れる台本の中の人物に侵食され塗り替えられ、少しずつ残った色がまた彼を作り上げられる。
そんなイメージを持ちました。
タイトルはここにあったのではないかと。
演じるという事を選んだ人生が最後まで苦しみと喜びを与えているかのようで、人生こうあるべきと言うか、こうであったら満たされるのであろうかとか。
まぁ羨ましかったのです。
先に述べたようにあまりにも違う人物像。
織本は良く言えば仕事人間で、他の言葉で言えば自己中心的だったのではないか。
妻の心情も赤裸々になる場面あり。
娘との会話、感情の爆発、同じ妻役を受け持つ私は本当に同情し尊敬し絶望したり。
織本の妻としての人生を垣間見せていただきました。
ドキュメンタリーをたくさん観たわけではないけれども本作品はとても良作なのではないかと感じました。
地味であり、赤裸々であり、とても面白かった。
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