「身切れの沢庵」陽が落ちる 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
身切れの沢庵
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切腹の沙汰を下された武士がその時を迎えるまでをただひたすら描いた映画。静謐で丁寧な描写は好感が持てる。とは言え、これが面白いかと言われれば微妙なところ。
陰影を生かした当時の暮らしの再現は良くできているが、御内儀役の女優の目鼻立ちが現代的すぎて、どうも背景から浮いている気がする。剃り眉もお歯黒もしていないのでなおさらだ。江戸風俗にそこまで詳しいわけではないので、そういう例外もあったのかもしれないが。
御内儀の言動も随分と押しの強い新時代風だけど、切腹を目前にした夫の死生観も宗教色を排して合理的なのが意外だった。
見終わってみれば、下女のしげのひたむきさが最も心に残ったかもしれない。
先頃、死刑執行を当日に告知するのは違憲だとして、死刑囚2人が国を訴えた控訴審の報道があった。現在日本では、執行当日1〜2時間前に死刑囚本人に告知されるという。片やアメリカではだいたい死刑執行一カ月前には告知するとのこと。この映画を見て、日本では江戸と言われた時代から変わらないのかと思った。物語では友人の計らいで前日に知らされることになるが。お上は今生の別れの価値など一顧だにしないのだろう。
さらにアメリカでは、“最後の晩餐”のリクエストも聞いて、できるだけ要望に応えるらしい。沢庵三切れとはだいぶ異なる。
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