「武士の本音」陽が落ちる HKさんの映画レビュー(感想・評価)
武士の本音
武士と聞くと、仕える大名や将軍に熱い忠義を持ち、
迷うことなく一本筋の通った生き方を貫く、というイメージだが、
この映画では、沙汰の理不尽さに疑問をもち、戸惑い、苦悩し、逡巡、葛藤する姿が描かれる。
対照的に、妻の良乃は、家を守るため、
武士としての誇りを全うできるように夫を気丈に支え、励ます姿をみせるが、
ラストでは抱え、抑え込んでいた内面が噴出する。
通常は切腹という運命を当然のごとく受け入れるように描かれる武士やその家族について、
現代を生きる我々にも近しい感情をもって、一昼夜の出来事について
時代劇では珍しく動きも少ない中で、小道具など使って濃密に心理描写しているところが面白い。
翻って現代と比較してみると、
命を懸けて、誇り、名誉を守るという生き方は、
美しくはあるけれど、何と生き難い、苦しいものかと思ったり、
一方で病気などで余命宣告を受けた時に自分の存在を維持できるのかとか、
とにかくいろいろなことを考えさせられる映画でした。
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