「懐かしき世紀末の空気感、神様が救わなくても、愛はそれを可能にする」私たちは天国には行けないけど、愛することはできる Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
懐かしき世紀末の空気感、神様が救わなくても、愛はそれを可能にする
2025.3.19 字幕 アップリンク京都
2023年の韓国映画(112分、PG12)
韓国代表を目指すテコンドー選手と訳あり女子の邂逅を描いた恋愛映画
監督はハン・ジェイ
脚本はム・ジョン&ハン・ジェイ
原題は『우리는 천국에 갈 순 없지만 사랑은 할 수 있겠지』、英題は『 No Heaven, But Love.』で、ともに「天国はないけど、愛はある」という意味
物語の舞台は、1999年の韓国・ソウル
韓国の女子テコンドー代表を目指しているキム・ジュヨン(パク・スヨン)は、元代表選手のコーチ(ヤン・ジイル)の厳しい練習に耐えていた
コーチはすぐに手を出す体罰型コーチだが、それを自分では行わない
ジョヨンは執拗にコーチに当たられ、それに部員たちも巻き込まれていた
部員たちはとばっちりを喰らうことに嫌気が差し、ジョヨンに強く当たるようになっていた
ジュヨンには生まれながらに幼馴染のミヌ(キム・ヒョンモク)という男の子がいたが、彼は恋多き男で、先日はチームメイトのソンヒ(シン・ギファン)にあっさりとフラれていた
だが、懲りないミヌは、今度はソンヒに似ているロッテリアの店員とお近づきになりたいと考えている
ミヌは新型ゲームを餌にジョヨンを巻き込み、彼女に連絡先を渡させるように仕向けた
物語は、ある夜にジュヨンが部員たちから暴行を受けているところから動き出す
店のゴミ出しに外に出た店員イェジ(イ・ユミ)は機転を効かせて、おもちゃのパトカーのサイレン音を鳴らした
それによってジュヨンを救うことになるのだが、その後2人は意外な再会を果たすことになった
それは、ジョヨンの母(キム・ヒエ)が関わっている社会復帰プログラムの対象として、イェジが自分の家に住むことになったからだった
さらにミヌも自宅に遊びに来て、奇妙な関係が始まっていく
その頃にはジョヨンも部活を辞めていて、時間ができた彼らは、ソンヒも一緒に、海の街へと遊びに出かけることになったのである
映画は、世紀末の不安定な時期において、自分の中にあった未知なる感情を発見する様子を描いている
ジュヨンはイェジとふれたことでこれまでにない感覚を有していて、これまでに恋というものをしてこなかったことが、その電撃の正体を曇らせている
周囲にいる男はミヌくらいなもので、他の同世代の男性は一切出てこない
ひょっとしたら女子校なのかなと思う感じで、同世代の異性との交流もあまりなかったように思えた
コーチはパワハラセクハラの最低野郎で、これまでにたくさんの被害者を生み出していて、ソンヒや主将(チュ・ソンユ)もそれに晒されていたことがわかる
ソンヒは両親(コ・スヒ&イ・スンヨン)からのプレッシャーも強く、多額の寄付をしていて、コーチを高く評価していた
コーチの所業は個人練習からエスカレートしていて、立場を利用してやりたい放題行ってきた
それを告発してもまともに取り扱わない警察も大概だが、権威的なものに弱い体質があって、それはテコンドー協会全てを巻き込んでいくことで問題化していくのもリアルのように思えた
いずれにせよ、かなり小規模な公開で、珍しくパンフレットのない作品となっていた
時代背景の解説とか、韓国におけるテコンドーの社会的地位などを盛り込んだ解説があっても良かったように思う
また、韓国版Wikiでもほとんど情報がない作品で、主要キャストですら調べるのが難しい作品でもあった
ググるよりはAIに聞いた方が効果的だったので、日本語の質問をハングルに翻訳してから、Chat GPTなどに投げかけてみれば良いのではないだろうか