ノスフェラトゥのレビュー・感想・評価
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『鉄の杭じゃダメ』らしい。
19世紀ヨーロッパを舞台にしたコスチュームもの。相当に凝った撮影、美術、衣装、メイクで、クソ真面目に仕立て上げたゴシックホラーの秀作。流石に褒めたポイントはオスカーノミネートされていた。吸血鬼伝説の原点的なストーリーで、伸びた犬歯やニンニクなどの後世にドラキュラ映画で発明されたツールは出てこない。どちらかというと、少女の夢想で眠りを覚まされた悪魔が戻ってくるというお話。ヒロインはジョニー・デップの娘さんらしいが、残念ながら適役だとは思えない。
怪奇映画の源流に殉ずるような昂揚が満ち溢れている
「いにしえのゴシック・ホラーが、パンデミック後の現代に忽然と甦った」――思わずそんな言葉が浮かんだのは、ノスフェラトゥのもたらした大量のネズミがドイツの港町にペスト菌をまき散らすという一連の描写を本作で見たからだ。
かつてムルナウ監督の無声映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』は、「スペイン風邪」が世界に吹き荒れた(1918~19)後の1922年に封切られた。それから百年余の時を経て新型コロナ収束の翌年、2024年にこのリメイク作は公開された。そのことになんらかの奇縁を求めたくなるほど、どこか次元を超えて繋がるモノが本作からは感じられるのだ。
かねてより古典映画に傾倒するロバート・エガース監督が無上の歓びにうち震えながらこれを撮ったであろうことは、想像に難くない。あるいはそんな本作に斬新さは見いだせないかもしれない。がしかし、リリー=ローズ・デップが吸血鬼に身を捧げたかのごとく、「怪奇映画の源流」に殉ずるような昂揚がここには満ち溢れている。
なにより特筆すべきは、全編35ミリフィルムで撮影されたという映像美だろう。注目ポイントは大きく分けて2つ。
1つ目は、西洋絵画のような質感にこだわり抜いた画作りだ。時代設定が1838年だからか、風景描写などはフリードリヒに代表される19世紀ドイツ・ロマン主義絵画を模したかのように見える。また室内描写では、さらにそこから遡るレンブラント、フェルメールらの時代、17世紀バロック絵画のような気品と冷やかさが画面を覆う。
なお、シーンによっては照明機材を使わず、蝋燭や松明の炎だけを頼りに撮影されたのだとか(たしかキューブリックの『バリー・リンドン』もそうだった)。その眩惑的な効果は一目瞭然だ。さながら蝋燭の炎の揺らぎに呼応するかのように、物語の行方も夢うつつにたゆたう。クラシカルな映像美は、その背後に潜む恐怖とエロスの交錯をも仄めかす。
2つ目は、古典映画への偏愛を意識させる撮影上のこだわりだ。たとえば室内の壁に伸びる影を捉えた表現主義風ショットなど、擬古典的なカメラワークがそれにあたる。また、北ドイツの街並みの俯瞰夜景や運河からの眺望があえてセット然としていたり、降り積もる雪の描写でCGを使わず、実際に「擬似雪」を降らせているところなど、1940年代ハリウッド黄金期の映画を想起させる。“アメリカの夜”で生み出された不穏な月明かりの夜景も、こうした例に含めてよいかもしれない。
ここで出演者にも少し触れておこう。まず憑依されたヒロイン役のリリー=ローズ・デップは、凡百のホラー映画と一線を画し、痙攣した奇異な所作のうちにも優美さを忍ばせる。陽射しに映える素肌は眩しく、死に至るエクスタシーを見事に体現する。もちろん、舌をぐにゅうと異様に長く伸ばす(これはCGじゃなく本人の舌らしい)など、目がテンになるショットにも事欠かない。
対するビル・スカルスガルトのノスフェラトゥは、前例のないバーバリアンな吸血鬼像を打ち立ててみせる。異様な長身に豊かな口髭を蓄えて毛皮を身に纏い、あたかも辺境の民間伝承の底流から召喚されてきたかのよう。その風貌はまるで山賊の頭目だ。噛みつく仕草も、「首筋からちゅうちゅう吸う」のではなく、「かぶりついた胸元からゴクゴク飲み干す」といったワイルド路線に。この優雅なドン・ファン風から粗野な辺境伯タイプへのイメチェンは、好みが大きく分かれるところだろう。
もう一つ気になったのは、立ち居振る舞いがややぎこちなく見えること。ことに終盤、リリー=ローズ・デップと対峙するシーンなど、もっと自然な強靭さが出てもよかった。迫力ある大スクリーンで見直すと、また違った印象を受けるのかもしれないが。
ヴァンパイアハンターの老教授を演ずるウィレム・デフォーは安定の演技。燃えさかる炎を背に叫びながら仁王立ちする姿など、フランケンシュタイン博士さながらマッドサイエンティストの一面を覗かせて秀逸。
リリー=ローズ・デップの新夫役を演じるニコラス・ホルトは、前半のトランシルヴァニアの旅で見せるハンパない怯えっぷりが大きな見どころだ(ホルトくん、契約書はよく読もう、そして気安くサインしないこと。知らない文字で書かれた条文など論外だよ…)。
このように本作は、過去のドラキュラ映画を細部ではモダンにアップデートしながら、一方で吸血鬼をダシに古典映画への憧れをてらいもなく語る。なんでもCGだらけのファストフード的な映画制作の時代に背を向け、映画を追い続けることの快楽を映像に刻みつけてみせる。このような映画こそ劇場の大スクリーンと極上の音響で見るにふさわしい。ぜひ再見したいし、一夜限りのIMAX上映とか実現しすれば駆けつけたいのだが…。
以上、試写会にて鑑賞。
因果応報
既存のヴァンパイアのイメージが覆る!
音楽も雰囲気もホラーなんだけど、ドレス、髪型、街並み、お屋敷の内装、墓まで全てめちゃくちゃ美で始終眼福✨
美の化身みたいなヴァンパイアのイメージを覆す彼と、取り憑かれても尚、美しい彼女の怪演に何度も目を瞑りました。怖かった涙。
でも面白かったー!!
ヴァンパイアと聞くと、本人が美しさを武器に餌になる人物を虜にしていく話だと思ってたけど、これは美しいものが好きなヴァンパイアが美しいものを求める話ね。
彼女はまるっとあのお姿の彼を受け入れてたけど、私なら召喚した悪魔が夜な夜な夢の中に出てくるなら、出来ればもっと違うお姿でお願いしたい。。アレを呼び込むほどの壮大な欠けと闇と不幸が彼女にあったとしか思えん!!
悪魔だから魅力じゃなくて魔力でトリコにしてたんだろうけど。
ゴシック好きにはたまらない世界観だったと思う。これはきっとヒットする!!
ヒグチユウコさんの世界観が好きな人は絶対絶対好きと思うなぁ。
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