「取捨選択せずに撮りたいものを撮ったという感じだが、やっぱりちょっと長いよねえ」ノスフェラトゥ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
取捨選択せずに撮りたいものを撮ったという感じだが、やっぱりちょっと長いよねえ
2025.5.20 字幕 TOHOシネマズ二条
2024年のアメリカ&チェコ合作の映画(133分、PG12)
ヘンリック・ガーデン監督の映画『吸血鬼ノスフェラトゥ』のリメイク
原作はブラム・ストカー『吸血鬼ドラキュラ』
超常的な存在と繋がった女性の運命を描くホラー映画
監督&脚本はロバート・エガーズ
原題の『Nosferatu』はドイツ語で「吸血鬼」という意味
物語の舞台は、1830年代のドイツ
超常的な存在に助けを求めるエレン(リリー=ローズ・デップ)は、祈りを捧げたのちにノスフェラトゥ(声:ビル・スカルスガルド)と通じ、約束を交わすことになった
それから数年後の1838年、エレンはトーマス(ニコラス・ホルト)と結婚し、幸せな日々を過ごしていた
金銭的に裕福ではないトーマスは、友人で造船業を営んでいるフリードリヒ(アーロン・テイラー=ジョンソン)にお金を借りていたが、勤めている不動産業も徐々に慣れ、近い将来には借金を返そうと考えていた
トーマスはクノック(サイモン・マクバーニー)の経営する不動産屋で雇われていて、遅刻癖から先輩たちからは呆れられていた
ある日のこと、クノックからポーランドに住むオルロック伯爵(ビル・スカルスガルド)からヴィスブルクにあるグリューネヴァルト荘園の購入の打診があったと告げられる
伯爵は都合によりこちらに来ることができず、そこで彼の邸宅に言って契約を取り交わしてこいと言われる
往復路を含めて一週間程度はかかるとされていて、そこでトーマスはエレンをフリードリヒの家に預けて、伯爵の元へと向かうことになったのである
映画は、トーマスと伯爵のパートと、エレンのパートが行ったり来たりする内容で、時系列はいじっていないので混乱はしない
ただし、終始画面が暗く、室内のシーンがほとんどなので、かなり眼精疲労がきつい内容となっていた
ホラー的なシーンはジャンプスケアが何度かあるぐらいで、心理的な怖さとか、見た目のグロさはそこまで感じない
伯爵のところに向かうまで、到着してからの顛末、そこから伯爵が海を渡るという一連のシーンと、トーマスが伯爵のところから逃げ出して教会で助けられるところとか、エレンサイドで夢遊病が悪化していく様子が事細かに描かれていく
なので、133分という少し長めの映画になっていて、体感時間的にはもう少し長いように思えた
流石に有名すぎる話で、海のシーンだけで一本の映画になる作品なので、全部入れ込むのはちょっと無理があると思う
距離のことを考えると、1週間で往復は無理だと思うのだが、当時の設定そのままなので突っ込んでも野暮なのだろう
伯爵が海を渡って来る距離も相当で、黒海から地中海を抜けて大西洋を北進することになるのだが、それだけでも結構かかるよねとか考えてはいけないのかな、と感じた
吸血鬼という存在に懐疑的なフリードリヒは流行病だと断定するし、その論説を唱えるフォン・フランツ(ウィレム・デフォー)との間に立たされるジーファース医師(ラルフ・アイネソン)も大変だっただろうなあと思う
普通の治療をしてもうまくいかず、かと言って超常的な事象を鵜呑みにも出来ないので、結果として対処療法になってしまう
医師が超常的な現象だと理解するのが、いつの間にか(契約書のサインの時かな)忠実な僕になっていたクノックの存在認知であり、同じようなことを色んな人から言われると信じてしまうレベルなのは致し方ないところだろうか
ジプシーとか、宿屋の主人の義母とか、ロマの老女とか、ややこしそうな人たちが意味深な言葉をトーマスにぶつけていくのも面白いのだが、それぞれがドラキュラというものをどのように認知しているのかの違いだった
伝聞と目視で言えば伝聞の類だと思うので、そう言ったものを信じるのはスピリチュアルな能力の賜物なのだろう
冒頭でエレンは伯爵と交信をしているのもその典型的なシーンで、電波系をいかにして現実に落とし込むのかと命題があったが、さすがちょっと苦しいところが多いなあと感じた
いずれにせよ、もう少しコンパクトにまとめて欲しい作品で、エレンの祈りから始まるなら、エレンのパートを主軸にした方が良かったと思う
映画は、エレンの待ち人パートとトーマスのロードムービーが重なっているので、視点が移動しまくって忙しい
それでいて、それぞれのシーンはこだわりがあって撮られているので、ある意味テンポを犠牲にしてでもきちんと描くという趣旨があるのだと思う
なので、これまでのドラキュラ映画で物足りなかった人向けのマニア映画だと思うので、あんまり一般層には響かないのかな、と思った