劇場公開日 2025年5月16日

「技法の宝庫」ノスフェラトゥ かもしださんの映画レビュー(感想・評価)

3.5技法の宝庫

2025年5月17日
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鑑賞方法:映画館

怖い

知的

「ウィッチ」に始まり、「ライトハウス」や「ノースマン 導かれし復讐者」といった作品群が一部のカルト・ファンから狂信的な支持を得ているエガース監督がまたまたとんでもない怪作を生み出してきました。
映画史に名を残している傑作「吸血鬼ノスフェラトゥ」をオリジナルの解釈を加えて完全リメイク。
これまたカルト映画の仲間入りが確定しそうな作品となっておりました。

基になった映画自体は「吸血鬼ドラキュラ」の原作者に許可を得ず、F.W.ムルナウがドイツで監督した非公式作品。
要するに二次創作です。
それも完コピに近い代物なので、著作権侵害で訴えられた曰く付き代物なんですが、言わずもがな破棄されず残ったフィルムにより最初の吸血鬼映画としてだけでなく、表現方法の宝庫としての価値を見出された作品として君臨し、今に至ります。

そんな作品が基なので、エガース監督もあらゆる媒体を作品の表現に活用。
白黒を彷彿とさせる発色を抑えた映像は勿論、音や影を使って様々な効果を生み出しておりました。

音では部屋を去る伯爵の足音と閉まる扉の音だけで部屋に残されたトーマスの不安を煽っておりましたし、子供部屋から聞こえてくる子供たちの泣き叫ぶ悲鳴だけで母親に恐怖と絶望を与えておりました。
無声映画のオリジナルでは出来なかった表現方法を巧みに活用して空間的な広がりを演出しておりました。

影の演出はもっと明確で、姿はないがカーテンに浮かび上がる伯爵の影だけで存在を表現したり、手の影だけで扉を開ける演出に用いたりと様々な形で影を利用していました。
特に夜の街を蹂躙していく手の影は秀逸です。
この影の演出もまた、フィルム感度の問題で夜間に撮影ができず、真昼間を夜として描いていたオリジナルでは出来なかった演出のひとつです。

この様に映画製作の面で発見する楽しみに充ちている作品。
ホラーとしては怖い演出が少なく、物語としてもオリジナルの域を出ていないといった問題点を抱えてはおりますが、カルト映画として熱を帯びてくる要素は多分に含んだ作品だと感じました。

かもしだ
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