「好みの問題」岸辺露伴は動かない 懺悔室 ゆうじんさんの映画レビュー(感想・評価)
好みの問題
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あの短いストーリーから、よくこのような映画として見ごたえのある脚本に仕上げたなと、その点は脱帽。『岸部露伴は動かない』シリーズの脚本家は、スタンドという概念を普通の超能力っぽい演出にし、JOJOなしで、JOJOの世界観を成り立たせているという点は、テレビシリーズでも映画でもいつも感心させられる。
そこは分かっていてなお、でもこのストーリーは自分好みじゃない。
原作版の『岸部露伴は動かない』は、短編好きな自分としては非常にそそられるシリーズで、奇妙で不条理な世界観が魅力だった。特に初期作品では、露伴はストーリーテラーであり、奇妙な出来事を淡々と見守る、仮にかかわってもその物事の根本的な解決には興味がないのが魅力であった。
特にこの『懺悔室』は、シリーズ最初の作品であり、露伴の傍観者っぷりが際立ったストーリー。非常にドライで、ブラックなオチだからこそ、最後の「彼は悪人ではあるが…」というセリフがびしっと効いていると思う。
だからこそ、「不幸な娘さんのために奔走して、幸せな結婚を成就させる露伴先生」という大衆向けのストーリーは好みじゃない。動機は単に人助けじゃなくて、露伴ならではの「作品を侮辱された仕返しなのだ」という心情を絡めたとしても…。
ドラマのヒットの影響なのか、新作の原作コミックでもちょっとずつ露伴が丸くなっているのが少し寂しいこの頃。
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