劇場公開日 2025年5月23日

「幸福すぎてご免なさい」岸辺露伴は動かない 懺悔室 かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 幸福すぎてご免なさい

2025年9月14日
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NHKドラマでの共演がきっかけで知り合った、高橋一生&飯豊まりえご両人の結婚というか幸福をネタにした本作は、前作『岸辺露伴ルーブルへ行く』よりもよくできている。漫画を“第9芸術”と呼んでもてはやすフランスと比べると、バリバリ保守のメローニが首相をつとめるイタリアはベネチアを舞台にしているだけあって、「漫画が芸術だって?ばかいっちゃあいけない」と畏まる露伴のへりくだった態度に好感の持てる作品に仕上がっている。

数十年前に私が観光で訪れた時は生憎天候不順続きでサン・マルコ広場は冠水状態、革靴を一足ダメにした記憶があるのだが、そんなベネチアの観光名所は本作に一切登場しない。運河に浮かぶカラフルなゴンドラや有名なカーニバルがベネチアの“光”だとすれば、劇中映し出される草ぼうぼうの廃墟や漆喰が剥がれ落ちた回廊はその“影”。二つに塗りわけられた“仮面”のごとき二面性(幸福と不幸は表裏一体)を持つベネチアのメタファーにもなっているのだ。

そんなベネチアで展開される本スリラーのテーマは荒木飛呂彦お得意の“呪い”である。一見実際にありそうな“呪い”にみえなくもないのだが、まったくの“ペテン”であることが、あの俳優たち(戸次重幸、大東駿介、井浦新)のオーバーアクトがしつこいぐらいに長ーく続く“ポップコーン🍿占い”によって観客に知らされるのだ。な~んだ、単なる“舌先三寸”の作り話=漫画限定のフィクションやないかい、と。

このファクトとフィクションの境界設定が実に漫画漫画(まがまが?)しく、シリーズの魅力の一つになっている。“ヘブンズ・ドア”と呼ばれる岸辺露伴の“スタンド”も攻撃性はほとんどゼロで、相手の本心を探ったり、操ったりするだけの補助手段。何かというと血飛沫や異物嘔吐(血糊と😛はあるけどね)が常套手段になっている洋ものスリラーに比べると、なんとも日本人らしい奥ゆかしさを感じるのである。

玉城ティナってこんなに豊乳だったっけと?が浮かぶピッタリしたウェディングドレス姿はさておき、心なしか(おめでたで?)ふっくらして見える飯豊まりえの脚線美が封印されていたのはなんとも残念でならない。ちょいと放映コードに引っ掛かりそうな、露伴の京香に対するハラスメントっぽい態度も本作に限ってはかなり抑えめだ。そんなこんなもいま現在“幸福に襲われ”まくっている一生夫婦にとっては些細なこと、ベネチア新婚旅行を満喫したかなのような「フッ」という飯豊まりえの幸せそうな微笑みが全てを物語っていた。

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かなり悪いオヤジ