「映画作品としての評価は?」岸辺露伴は動かない 懺悔室 komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
映画作品としての評価は?
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
(レビューが溜まっていたので短く)
結論から言うと、今作の映画『岸辺露伴は動かない 懺悔室』は、個人的には食い足らなさが残りました。
本作は、原作の「岸辺露伴は動かない」の再現度を評価するか、映画として評価するかで、評価基準が違って来るのではとは思われました。
残念ながら私は原作を知らないので、今作を純粋に個人的な映画としての評価で、食い足らなさを感じました。
その理由は、それぞれの登場人物の造形がやや抽象的に留まっていると感じた所です。
例えば、水尾(大東駿介さん)に物乞いをして、階段から転落して死んでしまう浮浪者のソトバ(戸次重幸さん)の人物描写は、あくまで抽象的な浮浪者として描かれ、個別具体のソトバの人生を描いてはいません。
一方で、ソトバは声高に動き叫び、人物描写として過剰になっています。
もちろんこの人物描写の過剰さは、おそらく原作の「岸辺露伴は動かない」の特徴で魅力なのだとも伝わりますが、一方で私的には、登場人物の背後の深みの無さを過剰な描写で覆い隠しているように感じたのです。
この、中身の深みの乏しさを過剰な表現で覆い隠しているように感じたのは、ソトバ以外の。例えば、水尾や田宮(井浦新さん)やマリア(玉城ティナさん)にも感じられました。
この要因は、しかしそれぞれ数多くの他作品で優れた演技を魅せて来た役者陣から考えれば、制作者側がそれぞれの登場人物の深い人物背景を考え尽くされていないのが原因ではないかと、僭越思われました。
水尾の成功もセリフで説明されるだけ、田宮の人生はほぼ不明で、マリアも周辺の人間関係は婚約者のロレンツォ・グリマーニ(アンドレア・ベラチッコ さん)以外は省かれ、婚約者のグリマーニもマリアの人生を引き受けるには描写が軽すぎではとは思われました。
岸辺露伴(高橋一生さん)や舞台のベネチアの魅力や、ストーリ展開は面白さも感じながら、映画としては食い足らない作品になっていると、僭越思われ、今回の点数となりました。
(辛口過ぎて、今作を評価している原作ファンの皆さんスミマセン‥)
