「A5よりA4」岸辺露伴は動かない 懺悔室 なつ F列さんの映画レビュー(感想・評価)
A5よりA4
今回の舞台はベネツィア。
杜王町の狭い街で活躍していた彼がベネツィア。さすが世界的に大人気の漫画家。
とりあえず、1ジョジョラーではなく観客として視聴しようと思っていた。
高く美しい空に白い雲、赤茶の壁、暗く狭い横道、そこを歩く岸辺露伴。
ダメだ…ときめきが止まらないよ。
冒頭からお約束のスリ撃退からのヘブンズドアー!
彼の能力をお披露目。ここでジョジョを知らない人へスタンドなどの余計な情報を排除しながら、この世界の設定や彼の漫画家としてのプライドと品格、気高さがわかる。芸術ではないのだ!漫画なのだ!
そこで1つの仮面を手にする。そして一軒の仮面職人の女性の元へと返す。
教会の懺悔室に興味本位で入るとうっかり神父と間違われ仮面の男の懺悔を聞く。
この辺は原作通りであくせく働いていた男の元に浮浪者から物乞いされキツイ労働をさせた挙句、浮浪者を死に至らしめる。その後、幸せの絶頂の時に絶望を与えるという呪いを受ける。
その呪いは男にあらゆる幸福をもたらす。男がいくら拒んでも幸せが降り注ぐ。
身代わりを仕立てあげ、娘を見る幸福を得た瞬間にポップコーンゲームが始まる。
ここで3つのポップコーンを投げるがゆっくりと、なんとしてでも死を回避したいとんでもなく凄まじい表情で口にするので、この映画のクライマックスはここでは…?大丈夫か露伴先生と少し心配になる。
しかし、男は次の呪いを受ける。今度は娘が幸せの絶頂にあった時に男は絶望を受けるというもの。そこから男は娘に2番目の幸せを与え続ける。
そこは自分が犠牲になって娘の1番の幸せを願いなさい!と私も男を恨みたくなる。
そんな記憶を読んだ露伴先生の指先に血が広がる。
絶望の幸せを与えられる男は黒い服、教会では不吉な黒い傘を幸せを避けるように出ていく。
その不穏な状況に京香ちゃんがやってくる。
作品の全体の衣装が良い。奇抜なスタイルが特徴の作品だが岸辺露伴は黒い出立ちだがコートの前部分にはシルバーのアクセサリがバチバチついて襟元はフリルっぽくて馴染むようでしっかりと主張しているし、京香ちゃんにいたってはどピンクの膨らんだスカートに袖と今までの雰囲気をガラッと変えてしまうし、人懐っこい笑顔で居るだけでホッとする。良いキャラだなぁ。
露伴先生は仮面職人のマリアとウェディングドレスを巡り再び再開する。
彼女の縁起の悪い家で何をしても幸せがくる話を聞く。なるほど〜そこにつながるか!
娘を2番目に押し留める男とそれに従うマリア。
男はそんなマリアが幸せの絶頂を迎える結婚式を阻む。
露伴先生の指先の血はどんどん広がり、幸福の呪いが広がっていく。京香ちゃんがふと口にする絶望とは死ではないのでは?ここで露伴先生も考えを変える。京香ちゃんはいつも思いついた事をそのまま口にするので、それが突破口になるのがこのバディ感よ。
舐めやがって…オペラから出ていく。露伴先生の反撃だーー!テンション上がるー!
オペラの曲をバックに男と対峙する。カサッと踏むのはナンバークジ。ほら拾いなさい、当たってるから。「だろうな」のセリフでそのクジをこれでもか!と踏みつける。これが露伴先生なのだ。性格が悪く時々大人気ない。打たれたケンカは全て買い全力でカウンターを繰り出す。
結婚式の日にちを変え、出し抜こうと目論んでいたが男の手下によって新郎を庇ったマリアが撃たれてしまう。
それを見た男は絶望する。
人の絶望は本人の死ではない。
そのまま男は出ていき、マリアは起き上がる。
幸せを浴びながらもたった1人の父親に1番の幸せを願われなかったマリアは1番愛する彼と幸せの絶頂の結婚式を挙げる。
大事な指輪交換で指輪をうっかり落とす小さな不幸を見て岸辺露伴先生もにっこり。
男はそのまま2人分の呪いを受けながら歩き続ける。絶望しながら生き続ける。
新郎も背中にピンクダークの少年のサインをもらってにっこり、京香ちゃんもブーケをもらってにっこり。
与えられる幸運ではなく自分の力で仮面を作りながら打ち勝つように生きてきたマリアもやっと自分の幸せを喜ぶ人生のスタートを切った。
そういえば君、イタリア語喋れたっけ?
いえ、全然。にっこり。
この2人の絶妙に噛み合わないコミカルな所が実写版岸辺露伴の強みであり、パラレルワールド杜王町が出来上がっているなぁとしみじみ思う。
たった1話分の話を大きく肉づけした部分も「世にも奇妙な物語」の様であったが主要キャラおよびゲストキャラ達もしっかり癖強にしていたのと、ベネツィアという美しい舞台にある光と闇の明暗が人生を現すものがするりと馴染むので画面いっぱいに楽しむ事ができた。
ヘブンズドアーのハンドサインがカッコ良い。
荒木飛呂彦先生のジョジョ作品には小林靖子さんが必要。
結局ジョジョラーとして楽しんでしまったよ…仕方ない