「共感できる人も多いだろう」おばあちゃんと僕の約束 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
共感できる人も多いだろう
カンボジアで鑑賞。本作の予告は劇場で何度も見ていて、これは中国映画だと思い込んでいたが、実際にはタイ映画で、原題は Lahn Mah (หลานม่า 「おばあちゃんの孫」) というそうだ。
ここで扱われるのは、老人の死との向き合い方、介護問題、それに伴う親子の確執とわだかまり、遺産相続問題、そしてそこに顔を出してくるいまだに根強い家父長制の問題、等々。
言うまでもなく、どれも日本の家族にとっても身近な問題ばかり。本作が公開されている東南アジア各国でヒットして感動の渦に包まれているのも理解できる。
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(2025/6/14 日本での鑑賞後に追記)
登場してくるおじさんたちは実際、どうしようもない人間として描かれているが、大人になった今、それぞれの生活や家族があり、それぞれの事情を抱えている。その結果、親の遺産の取り合いで兄弟姉妹の関係がボロボロになった話は日本でも決して珍しくはないはず。その一方で、「親の心子知らず」という諺も脳裏をかすめる。
物語の舞台はバンコク郊外で、トンブリという古都にあったタラートプルーという地区で、昔ながらの下町情緒あふれる街並み。良い意味での田舎の町感が、本作に初めて触れたときに住んでいた街近辺の様子も彷彿とさせるものがあり(列車は通っていないが)、その時には対して感じなかったものが、いざ離れてみると意外と感傷的な気分になる。
また、主人公たちの家族が中華系タイ人だということもあり、完全に東南アジアというより東アジア的なルックスと価値観が混在していることで、日本人の観客にも親しみやすさを感じさせる要因となっている。作中で重要な役割を果たす清明祭(タイ語で「チェンメン」、沖縄方言では「シーミー」)などもその一例であろう。
観賞後に、本作につけられた英語タイトル “How To Make Millions Before Grandma Dies” と邦題を比較ながら「誰が 誰に どんな約束をしたのか」と考えてみると味わい深いのではなかろうか。
ただ、前の鑑賞時にその一年後に国境で紛争めいた事態が生じ、カンボジアでタイのドラマの放映禁止になるといった事態が起きるとは予想だにもしなかった。家族のことを想いやれる平和な世界が続くことを心から祈る。