8番出口のレビュー・感想・評価
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原作再現度は満点。ストーリーは普通。
まず、再現度が高すぎて感動しました。冒頭の主観シーンから見慣れた通路のテカテカした光沢感と内装を目にしたときには思わず息を呑むほどでした。
一方でこの奇妙な現象に実際に巻き込まれた人間がどうなるのかについての演技表現も良質で、喘息持ちの主人公がパニックになる様子や、二章で主人公となるおじさんが同行者となった少年を前に大人としての態度と平静を取り繕いきれずに感情を爆発させる様子は見応えがありました。
おじさん、ポスター、ドア、ドア……ゲームプレイヤーもやっていたような間違い探しのルーチンにはシュールな面白さもありました
主人公の不安を的確に抉ろうするような、何者かの悪意を感じる恐怖演出や、現実に帰れずに8番出口の一部になってしまったおじさんの末路については、個人的に好きになれませんでした。というのも私にとって、8番出口はあくまで奇妙な現象であって、獲物を取り込もうとするホラー的な怪異のような印象が無かったからです。
また、劇中で度々強調される主人公が抱える諸問題と、それが絡んだ恐怖演出(コインロッカーの赤子や、非常口の闇の中で主人公が見せつけられた冒頭シーンなど)についても、舞台のほうに気を取られていた私には少々余計に感じられてしまう程度のもので、もっと原作8番出口のシーンを観たかったな、と思ってしまいました。
しかし、これはあくまで私の勝手な押し付けであり、ストーリーの無い原作を映画化するにあたって必要な要素だったと納得できるものでもありました。
期待しすぎると肩透かしをくらうことになるかもしれませんが、良作です。
淡々と進む時間の中で
ある電車に乗ったら日常に戻れなくなってしまう。
そこから出るためには。8番出口を目指して行くしかない、
ホラーのような要素もありながら、どこかストーリー性の深い映画だなと感じた。
物語の始まりと終わりとでは、自分が主人公と同じようなままであったのかもしれない。
終わりにかけて自分とどんどんと向き合っていく中で時間を取り戻すことで本当の自分になれるような正義を見せてくれるラストで良かったなと感じた。
自分にもどこか向き合いたくないような現実から逃れるためには、最後まで自分が信じているもの誠実であるのがよいのかもしれない。
そんなことを思う作品でした。
津波にした理由
原作も続編もリリース時から遊んだゲーマーです
ただの間違い探しゲームをよくここまで綺麗にまとめたなと驚きました
喘息は自分の身体すら満足に制御できない自身の弱さ、しつこい赤子関係の恐怖演出は主人公の父親になることへの恐怖や中絶への罪の意識を表してるんだろうなというのもわかったのですが、水に流される異変を原作の赤い水からあんなガチ津波に変えた理由はしばらくわかりませんでした
あれは多分子供を下ろさない・流さない⇒堕さない・流産させない選択したのを示唆してて、そのためにただの大量の水よりも明確に死を連想させる津波に変えたのかなあと
普通のホラー映画と同じように派手な恐怖演出やグロ、ジャンプスケアを目的に観ると期待外れになります。サイレントヒル2のように人物の内面や葛藤が異変に反映されてそれを観る人が察する(例:ネズミは冒頭で見ていたSNSの投稿から)、すれ違いやアクシデントを見過ごしたり見てみぬ振りして通りすぎてきた人間が人生の迷子に陥り出口を探しているという二重構造、これらがわざとらしい説明なしで暗喩特盛りで流れる静かなホラーなので気づかないと何これ全然怖くないつまんないになるかもしれません
良い映画でした
2人(3人)にとっての幸せ
主人公は喘息持ちの派遣社員。
彼女の妊娠にも喜べない状況。
そこに試練を与えられ、脱出を目指す過程で人として親として成長していくストーリー。
ゲームからここまで広げたのは素晴らしいと思う。
コインロッカーが出てきた時点で「コインロッカーベイビーズ」が連想されてしまったのでほぼ結末が想像できたが、予想通りのハッピーエンドで良かった。
彼女も電話の声からは「(貴方がちゃんとしてくれるなら)産みたい」と思っているし、主人公もあんな可愛い男の子と将来出会えるなら間違った選択はしないはず。一緒にパズドラやるのかな? 笑
イライラしっぱなし。
知識なしの全くの初見で鑑賞。
似たような通路をループしつつも異変を避けて出口を探す…という内容ですが、だんだんイライラが募りました。
以下ネタバレありです。
イライラの原因はおもに主人公の行動。
突然電気が消えたのになぜすぐに引き返さずスマホのライトつけてウロウロするのか。
なぜ少し開いたドアの中を覗きに行くのか。
サイレンが鳴った時、なぜすぐ引き返さないのか。
あとは途中から出てきた男の子も。
最初は口がきけないのかと思ってたけど喋れるんじゃん。
異変に気づいたなら教えてあげなよ。
てか喋れよ。
あとできちゃった話が余計だったかな。
「決められない」とか言ってる女にも煮え切らない主人公にもイライラ。
自分のスタンスみたいなものはないのかと。
ぼやーんと話すんじゃなくて、なぜ決められないのかの理由もあわせて理路整然と話してくれないと「ハッキリ言えよ」とイライラしちゃうのは私の性格によるものだとは思うけど。
映像も映画館の大きなスクリーンでの見応えみたいものはないし、終映したら配信きそうだしそれを待っても全然良いと思います。
「話題の映画を見た」という満足感はあったけども。
映画館で見る必要なし
ホラーを映画で見ることはないのですが、実況で何度も見ていたので、楽しみにして行きました。
結論としては、映画館で見る必要なし!
二宮くんの演技やおじさんの演技、子役の演技は良かったと思います。というか、そこしか良いところがありませんでした。
二宮くんのキャラクターに全く感情移入できなかったからこそ、白けた気分になりました。
ただただ可哀想だな……というだけ。
喘息の描写必要でしたかね?
ストーリーを作ったのは良いと思いますが、共感できる要素もなく、物語に入り込めなかったです。
なにより、異変が全く怖くない!
びっくりはしました。
気持ち悪くはありました。
でも怖くはなく、あー実況で見たな〜ってくらい。
異変が起きたなと割とすぐ分かるのにダラダラしてるのが緊迫感のなさを演出してると思います。
津波のところだって何でボーッと突っ立ってんだ? と思っちゃいました。さっさと引き返せよ、と。
開いた扉をわざわざ覗き込んでるところとか、めちゃくちゃ冷めました。
そんなわけないだろ。
異変の有無を間違えてもペナルティがない事はわかっているはずなのに、本当に脱出する気あんの? と思わずにはいられなかったです。
だって1/2を8回当てればいいわけですよ。
単純な1/2を8回ではないんです。
明らかに異変とわかるものがあるので、実際はそんなもんじゃない。
トライアンドエラーしろよ。
例えば挑戦できる回数に縛りがあるとか、わかりやすくカウントダウンがあったりすれば緊迫感もあったと思います。
でも異変に巻き込まれても全て元通りで、ペナルティもないわけで。
なにをちんたらやってんだ、という気持ちと、何度も言いますが、異変が起きているのに逃げもせずにしっかり体験するんです。
ホラーでもなくびっくりでもなく、ストーリー物でもない、中途半端な映画でした。
半分過ぎたあたりから、いつ終わるだ? と、非常に退屈で、めちゃくちゃ映画が長く感じました。
国宝みた時よりも、体感長かったです。
普段ホラー系を見る事がないため、それもあってか、いったいこの映画で何を楽しめばよいのかさっぱりわかりませんでした。
わざわざ映画館で見る必要はないですね!
二宮くんとおじさんのファンには見ることを推奨します!
※おじさんのストーリーよかったですが、途中で女の子がでかい声で延々リピートするの、内容に全く共感しませんでした。
うるさいなーってくらい。
全体的に共感できる(ストーリーにのめり込める)要素がなく、可哀想だなーという、神様視点から降りれることはなかったです。
ストーリーを楽しむ映画ではないのですが、だからといってホラー要素が強いわけでもなく、ただ赤ちゃんがうるさくて不快、喘息が可哀想で同情ってだけです。
普段実写化とか大好きで、実写化には実写化の面白さがあるよね、と思っている方なのですが、これは実況プレイみた方が面白いです!
原作リスペクトは感じましたが、それゆえに実況プレイと比べてしまう結果となりました。
誰にもお勧めすることのない映画です。
ただし、出演者のファンならみたらいいんじゃないかなーと思います!
追伸 コメントへ
ストーリーはもちろん理解してますよ。
特に驚きもなく、そうなるだろうなーでした。
伝えたいものがある、も理解してます。
ですが、深みはないなぁと思ったからこそつまらなかったなーと思いました。
ありきたりというのはもちろんですが、ストーリーもホラーもびっくりも中途半端で……
と、書いてますので、ストーリーの理解と映画の良さは比例しません。
というか、8番出口にストーリーを求めて観にきてないですし、みんなストーリーを楽しみにしにきたの……??
ストーリーを変に入れて大衆受けしたからこそ、ここは良い!が少ないんだと思います。
もうお一方のコメントの通りですね!
通路は続くよ、どこまでも‼️
地下鉄の通路をただひたすら出口に向かって歩き続ける作品‼️ちょっと「CUBE」みたいなんですけど、「シャイニング」みたいに天井から血が流れ出したり、ネズミが変形したような生物が出てきたり、濁流が流れ込んできたりと、いろいろ見せ場を工夫したりはしてるんですが、イマイチ何を伝えたいのか分からない作品‼️別離の予定の恋人が妊娠した事で、父親になる事への主人公の成長⁉️後々カルト化するのかもしれない作品ですが、今現在あまり魅力を感じない‼️
子どもが見れば違う見解
いつもの通勤風景を見る目が変わりそう。どこにでもありそうなメトロの通路、ポスターを探してしまう。
異変を見つけたなら早く引き返せ、と、そのへんが芝居くさくて鼻についたが、ゲームを知ってる息子に言わせると「ゲームだと単に引き返すだけだけど、一つ一つがお話になってて面白かった」と。なるほど。
予告編がやたら長かった。イオンシネマ川口のスクリーン5は、スクリーンがでかかった。
評価は低めですが、私は面白かったです!
子供が観たいと言ったので、一緒に観たら面白かった『はたらく細胞』と同じパターンでした。
薄暗く同じ所をグルグルとずっと出口を探して歩き続けている状況を、私は日常や人生の象徴と解釈しました。
迷う男が周りの僅かな変化に目を向けた時に始めて、同じ毎日を繰り返し、見て見ぬふりをしてした、愚かな自分の姿を客観的に見ることが出来たんだと思います。
出口を探していたはずが、少年(迷う男の子供?)と出会うことで、結局は未来へ続く電車に乗り換えたんだと思います。
最後、電車の中で赤ちゃんとママに怒鳴る男の声を聞いた迷う男の表情は、迷いながらも見て見ぬふりをしていた自分と決別し、妊娠した彼女とも向き合おうと決めた強い意志が感じられました。
表情で語るニノは素晴らしかったです。
あと良かった点はカメラの動きです。
チャプターの変わり目以外は、人物の前から後ろからと自然に切り替えながら途切れる事無く撮っている事で、ずっと出られない状況を共有している感じでした。
評価が低めだったので、カンヌでスタンディングオベーションされたのは何で?と思っていたのですが、観て納得でした。
回りくどい低予算制作作品?
地下道のなかを掲示物の一つであるエッシャーの騙し絵のように堂々巡りで繰り返される動作を観るたびに、『メメント』に近いようにも感じた。撮影場面がかなり限定されているので、低予算制作作品ではないかとも思われた。歩く男や女が奇妙な言動をするところは確かにホラーだった。迷う男がもっていたペットボトルの水を飲んで吐いたり、ぶちまけたりした荷物はどうなったのだろうか。少年が歩く男と一緒に階段を昇ろうとしなかったのは、迷う男と行動をともにしなければならなかったからなのだろうか。迷う男と少年との関係は、テレビドラマ『うみのはじまり』にも似た感じがした。地下道のドア越しに地下鉄列車内での行動の振り返りをしている場面をみて、ようやく意味が伝わってきて、回りくどく感じた。最後の行動に踏み出す場面があえて描かれなかったところは、『新聞記者』の結末にも似ていた。消極的な環境から勇気を以て抜け出す決意を示しているとすれば、『はてしない物語』の原作の主人公の行動とも共通していると思われる。
これはあかん
中途半端なホラー映画、安物の三流映画に1時間半は時間が勿体無い。時間とお金を返せと言いたくなる。
内容イマイチ最後のオチもない。スッキリしない、映画を制作するうえで1番やってはいことをやってるお手本、制作サイドはこのようなお粗末な映画にならないよう、人の振り見て我がふりなおして下さいね。内容をレビューするまでもない、最後にかすーーーーーーーーー
ホラーではない
ホラーと言うことでしたが、全く怖くありません。
とにかく音が大きく、赤ちゃんの泣き声と、迷う男の咳と、繰り返されるボレロのメロディーが、うるさいくらいでした。
ストーリーとしては、まあまあ面白くなくはないかな。異変を見つけるゲーム要素のストーリーですが、子どもでも見つけられるレベルの異変。
どうして?なぜ?と深く追求せずに観る映画だと思う
女性目線で見ると、あんなに美しい佇まいの女性(小松菜奈さん)が、中年で自己肯定感がかなり低い(俺みたいな奴が…的な)非正規雇用の男性(ニノ)となぜ付き合っているのか不思議でした
ニノ主演だから注目された映画
人には勧めません
まあまあ
ゲームも知らないけれど、王様のブランチで紹介されてておもしろそうだったから観ることに。
彼女とのエピソードは映画化するに当たってのストーリーづけでしょうか。観るまで想像していなかったストーリーだった。出産は本来とても素敵で尊いことだと思うけれど、悩むにしても、一部不気味な表現があったことは残念だった。
ゲームを知らなかったので、異変がなくてクリア?した時に、案内板の出口の数字が変わっていくことに、コレも異変じゃないの?の思ったけれど、そういう展開じゃなかった。
二ノ宮がイヤホンでボレロを聴いていたのが、合わないと思った。派遣社員だったようだけれど、その背景には実は音楽家を目指していたとかでもなさそうだし、普通に趣味でクラシックを聴く人もいるだろうけど、そういうキャラにも見えなかった。なんであの選曲だったんだろう。
でも映画を観終えて帰宅してからも、ボレロが頭の中でずっと鳴っていて、ついにはYouTubeで聴いてしまった!
ゲームを体験してからが良い
ゲームにない演出もあって、観ていて驚きもあるんだけど、やっぱり一度ゲームをやっておいたほうが「志村、後ろ!」みたいな感じで楽しめると思う。
ゲームを知ってる人ほどニヤッとできる場面も多くて、観方の幅が広がる感じ。
ただ、ゲームにない演出の中で、途中に出てくる赤ちゃんの泣き声がかなり怖くて、ちょっとトラウマになりそうなレベル…。
妊婦さんとかはご遠慮したほうがいいんじゃないかな?と思った(余計なお世話かもしれないけど)。
全体を通してみると、「なるほど、そういう仕掛けで映画にしたのね」って納得できて、最後まで面白く観られました。
ゲームの世界観を体感できて楽しめた!
ゲーム8番出口にストーリーをここまで付け加えられたことに凄いと思いました
他のゲームでも赤ちゃんの泣き声がストレスになるような要素があるものを見たことがあったので、不快に感じる人が多いんだろうなぁと…
ラスト、主人公は見て見ぬふりをすることなく何かしら行動できていたら凄い成長だ
何事も有耶無耶にせず、自分で判断して進んで行けというメッセージを映画から受けました
あとおじさんの演技が凄かったです!!
ゲームから物語への昇華がきちんとされている
8番出口のゲームのルールである「選択を間違えれば振り出しに戻る」という構成を基盤として、物語が形作られている。実際、終盤では冒頭の「振り出し」に戻ってやり直しが行われることで、その構造が明確に示されていた。中盤は物語に十分な重みを持たせる役割を果たしていたが、やはりメインとなるのは「振り出しに戻る」という構成であろう。
一つのゲームからここまで豊かな物語を構築できていたことに、素直に驚かされた。
映像と語られているものが異なる
映像は、予告編と事前説明通りだが、語られているのは「中途半端な優柔不断な男」が「一端の男」に変わる様。
ホラーのくくりで紹介されていたが、全然ホラーではない。ホラーのつもりでみたら、ハズレ。
二宮くん演技で、いい話を見るための映画。
大学生くらいでは、理解力できまい。
話の構成はシンプル。ドラマチックではない。
ウェルメイド、これこそが本作の醍醐味
ひょっとするとコレは、ぐるっと一周回って一場の「悪」夢だったのかも…。そんなことを考えたのは、終盤近くに地下通路で主人公とすれ違う通行人たちの服装がことごとく「黒」で、非現実的な印象を受けたからだ。
たしかに悪夢のようなこの物語の非現実さは、ベケットやイヨネスコの不条理劇を一瞬思わせる。あるいは星新一や筒井康隆のショートショートと言いかえてもよいか。本作は、原作のゲーム設定を巧く活かしながら、現代人の深層心理に切り込んでみせた……かのようにみえる。
しかし終盤、大方の観客をナットクさせる「前向きな落としどころ」へともっていくところに、本作のキモがよく顕れていると感じた。そこには、時流を読むことに長けた監督のアイデアマンとしての有能さが窺える。端的にいって本作は、世界の映画の潮流を読み取り、観客を飽きさせない素材としてあの手この手で使いこなすことにすべてを賭けた映画だといえるのではないか。
ウェルメイド——これが本作の醍醐味である。原作のシンプルなゲームを95分という上映時間に仕立て直す。そのために映画の「トレンド」や「見せ方」を巧みに織り交ぜ、とにかく観客の集中力を切らさない。その徹底ぶりになにより感心させられる。
たとえば……物語のモチーフに「子を持つことへの不安と逡巡」「現代社会における孤立感」などを持ってきて、それを今風のアートなホラーテイストで描いてみせる。アイデアマンの面目躍如だ。
個々の見せ方に目をやると、繰り返しのパターンやワンシーンワンカットもどき(?)は、ヒッチコック以来の古典的伝統にしっかり則っている。また「記憶の底から召喚されてくる女性」の描写は、タルコフスキーの『惑星ソラリス』をはじめとして枚挙にいとまがない。
すでに散々言及されているキューブリックについては、原作時からあるらしい『シャイニング』の影響はさておき、「妙に清潔感あふれる白タイル貼りの壁」など、まさにキューブリックの匂いプンプン。そして「人体パーツが変容したクリーチャー」は、さながらクローネンバーグの世界だ。
そのほか「俯瞰で映し出される波打ち際」はシャマラン監督『オールド』を、ラストショットはトム・クルーズ主演の『アウトロー』を、それぞれ思い出させる——といったぐあい。そうそう、近年のアメリカ映画に定番(?)のゲロッパ描写もしっかり本作にある(笑)。
要所要所で計算高く手札を切りながら、最後は落ち着くべきところに着地してみせる。それでいて案外あざとさを感じさせない。むしろ「観客自身が考察する」愉しみすら与えてくれる。どうやら監督の本領はこのあたりにありそうだ。その限りにおいて、少し前に観た『DROP/ドロップ』と同程度には楽しめたし、吉田大八監督の『敵』もこのくらい振り切ってみせたらもっと良かったのでは、などと思ったりもした(引き合いに出してスミマセン)。
さてここで、個人的に気になったり、イヤだと感じたところも挙げておきたい。
まず、この映画には、ふだん東京の電車内などで目にする「イヤな感じ」があふれかえっている。これが案外シンドイ。
赤ん坊連れの女性に怒鳴り散らすクズ男は論外としても、スマホ・イヤホンで動画、ゲーム、音楽に没入する人々。歩行中わざとぶつかってくる通行人。そして、おじさん。そのおじさん目線で想像(創造)された女子高生。どこまでいっても、おじさん…(苦笑)。
こういう他者の視線、他人の存在を意識しない人間集団、生身のコミュニケーションが成立しにくい公共空間を、わざわざ映画の中でまで見せられるのはちょっとね、と。
次に、電車の中でクラシックの「ボレロ」はあまり聴かないだろう、という素朴なギモン。クラシック音楽は、他ジャンルに比べてダイナミックレンジが極端に広いため、公の場においてイヤホンで聴くのにはあまり適さない。音量を自動調整するノーマライズ機能があるから大丈夫かというと、演奏全体が平板になってクラシック本来の面白味が喪われてしまう。「耳のあるヒト」ならそれを避けるだろう。無論、映画のラストショットまでたどり着けば、見事に「ボレロ」が映像にシンクロして得心がいくのだが。
それから後半、主人公が津波で生き別れになった子どもの行方を探る素振りも見せず、真っ直ぐ8番出口へ歩を進めるのは、どうもナットクいかない。あれが未来の我が子だと悟ったのだとしても。それじゃまるで子どもを置き去りにした「おじさん」と同じではないか?
そのほか、前半早々に主人公が酸素吸入器を投げ棄ててしまうが大丈夫か(中盤まで見ると、どうやら精神力で喘息を克服したらしいと一応ナットクはするのだが)とか、主人公が広告を一つひとつ確認するセリフの中で「高額(こうがく)アルバイト」は字数多くて言いづらくないか(「バイト」「えろバイト」「高額バイト」と短縮した方が語呂が良い)とか。まぁ、いずれも大したことではないが。
なお、「ニノの元カノが小松菜奈のような若いコというのは、年齢的に無理がある」といった感想をいくつか目にしたが、その点について個人的には違和感を覚えなかった。本作における二宮和也(実年齢42歳)のくたびれた「童顔」は、その優柔不断さも併せて小松菜奈(同29歳)と元カップルという設定に見合っていたように思う。それに、世の中には「紀州のドン・ファン」みたいなカップルだっているんだからさ(アレは動機が違うか)。
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