「20分で終わるジャンプスケア・ループ系ホラーゲーム、それを90分の映画に。」8番出口 KKKさんの映画レビュー(感想・評価)
20分で終わるジャンプスケア・ループ系ホラーゲーム、それを90分の映画に。
ゲーム内容、世界観、登場人物を脚本家なりに解釈し表現しているのでとても見ごたえがあるし、作者の思いも見て取れてよかった。
同じ場所をひたすらループする恐怖、焦燥をBGM、カメラワーク、人物で表現できている。見ているこちらも心臓が締め付けられるような気分、凄みがある。またゲームに負けず劣らずのジャンプスケア要素が多い、予備の心臓が必要かも。
不快なトラウマ表現もあり、お化け屋敷レベルでも本当に無理な人は映画館では視聴できないと思ったほうがいい。
♦良いと思ったところ①最初と最後
「走行する地下鉄車内、子供の泣き声にキレるサラリーマンとひたすら謝り、赤ん坊をあやす母親。周りの人は気が付かないフリをして誰も母親を助けない。」しかし主人公もその一人、結局大音量のボレロを流すイヤホンでサラリーマンの怒号に蓋をして気が付かないフリ。彼には母親を助ける勇気はなかった。
上記がプロローグの内容、これは後々地下通路をループする一因となった。
そしてラストシーン、主人公はプロローグと全く同じ状況に遭遇する。「地下鉄車内、サラリーマンに怒鳴られる赤ん坊の母親を誰も助けようとしない。」
徐々に音量が大きくなるBGMボレロ、主人公である迷う男の顔に真正面から徐々にズームが入る。迷っている様子。どうなるか。
迷う男、意を決して母親とサラリーマンがいる方向へ動き出す。タイトル「8番出口」が大きく出て終幕。ボレロに合わせて流れるエンドロール。
ループものの最後にふさわしい終わり方、最後の最後に主人公は迷いを振り払い、母親を助けた。人間としての成長と真のループからの脱出が同時に描かれていて圧巻。これが見たかった。
♦良いと思ったところ②キャスティング
本当にゲームから出てきたような風貌の河内大和、「歩く男」はこの人にしかできない。
物語の構成から必要な主人公「迷う男」、冴えないフリーター役は二宮和也ピッタリ。
ほかの出演者も全員実力派で演技も自然、映画の雰囲気に自然と引き込まれた。もう少し下手な人を出演させておけば心臓が擦り減らずに済んだかもしれない...
所感
なぜ地下鉄通路のループにハマってしまったのか、通路をNPCのように歩いているおじさんは何なのか、後々繋がってくるので納得。主人公はプロローグの出来事がずっと気がかりであることを、彼女との電話や、異変の描写でしっかり示されてるし。
ダメ出しするとすれば「よし怖がらせちゃうぞ~ホラホラホラ~」感が一部ある。ジャンプスケア・ホラーだから当たり前ではあるけどもう少し巧妙にできたところもある。ねずみのシーンとか。
