「体験」8番出口 どんすこいさんの映画レビュー(感想・評価)
体験
クリックして本文を読む
劇場で映画を観ることは、アトラクション等と同じ一種の体験型エンターテイメントであるという感覚を、この作品は分かりやすく伝えてくれる。メッセージやら伏線やら何なやら、そうしたものは物語の核として必須アイテムだが、そればかりに気を取られていては、恐らく”映画を楽しむ”という状態にまで心が持っていけない。この作品は、登場人物を名前から何まで結構ぼかして写し続けることで、観客がドラマに配るリソースを強制的にカットし、謎の通路とそこで起きる超常現象に翻弄される人々と出来るだけ同じリアクションを観客が取れるように、空間を組み立て続けた。あの通路と似た閉塞感を持つ、映画館でやるからこそ輝く演出方針だ。
最高の評価を付ける理由はただ一つ。私は、映画館で映画を観たあとの、まだ映画の世界に居るのではないかという感覚がどうしようもなく心地よく感じて好きなのだが、この作品を観たあと、今までに無いような強さと重さと深さで以て、私はその感覚に飲み込まれたのだ。閉ざされた空間で巻き起こる超常現象から逃れ、現実に帰っていく。主人公と同じ状況だからこそ起きた、鑑賞後も残留する没入感の飽和。あれを超える体験は、断言するが、この作品以外では絶対に味わえないだろう。
コメントする
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
