「明るい画面のホラー」8番出口 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
明るい画面のホラー
明るいホラー映画だった。アリ・アスター監督の『ミッドサマー』も明るいホラー映画だったことを思い出した。あれは、青空の太陽の下で異様な奇祭が繰り広げられる内容だったが、こちらは明るいLEDライトの下で心理の迷宮に迷い込む作品として作られている。(主要なレファレンスになっているであろうキューブリックの『シャイニング』もその名の通り明るいホラーだった)
舞台となる地下通路のセットも綺麗だ。不自然なほどに。使用感がないというか、開通してまもない地下通路のようだ。
典型的なホラー映画なら、セットをもっと汚しをいれて、古ぼけた感じを出して、電球も切れかかってたりして、恐ろしい雰囲気を出そうとするパターンが多いけど、本作の作り方はその真逆。しかし、くっきりと何もかも見えているはずなのに、出口は一向に見えてこないことの恐怖がある。異変探しに観客を参加させるために明るいという理由もあるだろう(原作ゲームも明るいし)。
キャラクターの匿名性も作品の面白さに一役買っている。固有の名前を持たない本作のキャラクター、必要以上に描かれないバックグラウンド、その方が現代の観客が自分を投影しやすいと考えたかもしれない。
コメントする
