「観る人の人生経験でかなり評価が変わる映画」8番出口 ケロシさんの映画レビュー(感想・評価)
観る人の人生経験でかなり評価が変わる映画
ストーリーの無いゲームから、良くこんなに素晴らしい映画に昇華させたなぁと感動している。
始まりの、「迷う男」の元カノからの電話で、持病の喘息が一気に悪化していく様子で、彼の迷いや不安が理解できるし、ループに紛れ込んでから彼が何度も「大丈夫」と呟くところまでは観ている方も息をするのが苦しくなるくらい。ただ、少年と出会ってからは徐々に顔に血の気が戻っていく。
少年が「歩く男」といる時に喋らないのは、彼が少年にとっての父親になる人では無いということの暗示だったのかもしれない。「迷う男」と歩き始めた時も最初は話さなかったけれど、身の上話をしてから明らかに少年の態度が変わったのは、「迷う男」が少年の父親になるという確信を得たからなのか。ここまでで、少年は彼と元カノの子供の未来の姿であると考えられる。
海辺の楽しいシーンから、濁流に飲み込まれれながらも少年を8番出口のサインボードの上に抱き上げるシーンで、「迷う男」が迷わず少年を助ける行動をとったことに感涙した。彼の父性の発現なのか?
そして、ラストシーンでは、元カノのところへ迷わず行く決断をして、そこでまた起きるループに終止符を打つべく、彼は動く。実際に動くシーンはほぼ映らず、目の動きだけでそれを表す最後の二宮和也が秀逸だった。ここでまた感涙。
そして、主題のボレロ。映画の始まりに鳴るボレロは不安を掻き立てたが、終わりのそれは「迷う男」を鼓舞するファンファーレに聞こえた。
ただ、これは私が息子を持つ親で、今まで生きてきた中で「迷う男」と同じような経験をしたことがあるからということもあるのかもしれない。
人はそれぞれ無意識に自身の経験値と照らし合わせて物語を読み解こうとするので、この映画を観た感想にもそれぞれ隔たりがあるのは仕方ないのかなと思う。
私は既に5回観ているがその度に新しい発見があり、それが楽しくてまた観に行きたいと思っている。
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