劇場公開日 2025年8月29日

「あくまでライトな大人向け。」8番出口 キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 あくまでライトな大人向け。

2025年9月14日
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鑑賞方法:映画館

主演がニノ?
監督が川村元気?
人気ゲームが題材?
カンヌで喝采?

どーせ、話題性だけで観客に媚びた映画なんでしょ?

そんな、何の根拠もない「誹謗中傷」気味のスタンスでいた私。

当然、劇場での鑑賞はスルーの方向で予定していたが、どうも私の周りの映画好きからは好評を得ている様なので、重い腰を上げてみた。

いやいや、どーしてどーして。

ちゃんと楽しめる映画でございました。

冒頭、ゲーム上では「自分」だったあの主人公が「嵐のニノ」となり、物語上の設定が与えられたワケだが、私はその設定に感情移入しにくかった分、途中で主観が入れ替わった辺りはすごく楽めた。

この地下道でのループからの脱出が本当に幸せな行為なのか、現実という煉獄に戻るだけでは?という問いかけも、日雇い派遣の主人公より、会社員然としたあの男性の方が当然説得力があるし。

また「ここ曲がったら、壁の数字が増えてる…はず…だよな?」という疑心暗鬼のドキドキというゲーム由来の楽しみも堪能できた。

YouTuberたちによる実況配信で劇的に認知度を上げたことがこの人気の要因だと考えれば、ターゲットは小中高校生といった若年層を中心に、その親世代を含めた広い範囲になる。

でも、このシュールなゲーム内容を映画にすれば、どうしても「尖った」作品にならざるを得ない。
結果、現実に完成した作品自体はすごく尖った部分もありながら、すごく大衆的(悪く言えば「古くさい」「使い古された」)な部分も併せ持つ、微妙なバランスの出来上がりになっていた。

そこが気になるといえば気になる。

あのラストも、「そりゃ、そうなるよね」と受け入れながらも、「主人公の成長、あっぱれ!」という人もいれば「あれ?ヒネリなし?」という人もいるだろう。

その辺りの、「安定の着地」を受け入れるか否かという感想の差はしょうがないんだろうな。

ただし、明らかに「ホラー」に分類されるこの映画を、こういう広いターゲットに向けて宣伝した功罪は、間違いなく劇場の客層にも影響していて、私の観た日曜日朝イチ上映回は、結構な数の小さなお子さん(小学校低学年)連れがおられたが、映画の途中で退席される家族も複数見られた。

ホラー演出・津波表現・望まぬ妊娠・父になる覚悟・繰り越される日常という地獄…

どう考えても子供向けではない演出が繰り広げられるこの作品に、説明なしで子供たちを劇場へ誘い込んだ責任は軽くはない。

おそらく良くも悪くも「こんな映画とは思わなかった」という方も多かっただろう。

ただ、「8番出口」という不条理なゲームの世界観を、挑戦的に物語化したことは評価されるべきだし、大人が楽しめる作品であることも事実。

平均の★評価はどうしても低くなってしまうのは、こういう作品をこういう売り方で拡散させた以上、仕方のないことだし、それでも興行収入は「大ヒット」であれば、それにケチつけるのもおかしな話だし、この数年の洋画のパワー不足の中では頼もしいことだと思っている。

大袈裟ではあるが、いろんな意味でのチャレンジが、一つの結果を生んだという実例として面白い。

キレンジャー
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